横浜を拠点にするデザイン会社「スタジオニブロール」は、初のテキスタイル展を7月27日まで象の鼻テラスで開催している。スタジオニブロール代表でデザイナーの矢内原充志が中心となって「表層と日本性」をテーマにした40点の生地を国内の産地で制作した。企画の意図を聞いた。
(聞き手=須田渉美)
ファッションが好きで、10年近く前まではメンズのブランドもやっていました。しかし、新しいものをどんどん作っていくビジネスに気持ちがそぐわなくなって、環境負荷、人権問題といったことに罪悪感も感じて服作りから離れました。以降、経験を生かして自治体や企業のブランディングに携わり、価値を上げるお手伝いをしています。とはいえ、新しいものを作ることに消極的な自分に疑問も感じ、もう一回、ファッションの世界で発信したいと思ったんです。用途が限定されない布に向き合うことにしました。
表層を掘り下げ、日本性を問いかけることをテーマにしています。以前は自分が表現したいことを服の形にしていましたが、この10年のブランディングの活動を生かし、全てを自分でコントロールするのではなく、客観性を持つことを心掛けました。テーマに基づく柄の企画は、外部のグラフィックデザイナーにも加わってもらいました。
クライアントの課題を聞き、ネガティブなことをポジティブに変換していく考え方も反映しています。機屋、染色など付き合いのある産地の工場に聞いて、何ができるかを考えて、ユニークな生地を作りました。色数の限られた古い機種の顔料インクジェットプリンターで出力し、後染めして立体感のある水面風の柄を表現したり、レーザーカッターの出力を弱めて防炎加工のオーガンディに揺れ動くカット柄を入れたり。
展覧会の先は何も考えていませんが、たくさんの人に見てもらってコミュニケーションを取る機会にしてきたい。空間、インテリアなどジャンルを問わず、可能性を広げていければと思います。
