24年4月から、時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用される。運賃の上昇にとどまらず、現状で推移すれば30年までに34%の貨物が運べなくなると経済産業省は警鐘を鳴らす。陸送業の問題にとどまらず、今後は荷主側も一定の責任が問われる。長時間運転を前提とした到着時間の設定などが恒常化した場合、荷主への勧告、荷主名公表のほか、法的リスクを負う可能性もある。
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進む共同配送の動き
物流と言っても、自社で物流拠点を持つ企業、3PLを活用するケースなど多種多様であり、増大するEC物流への対応策も千差万別だ。
課題解決の1例が共同物流。団体ベースでの共同配送の取り組みは過去にもあったが、今年は豊島・田村駒・スタイレム・万達旅運などの協業もスタート。各社の体制が異なるため一朝一夕には進まないが、まずは自社内で工夫し難しい時は共同配送。「共同配送ありきではない」という姿勢で、徐々に物量が増えている。
物流拠点の新設や既存拠点の整備も目立った。ワコールはEC物流を内製化、アダストリアもグループ最大級の物流センターを今夏に開設した。しまむらは27年に奈良県に新たな拠点を開設予定で、タビオも物流センター用地を購入するなど備えも進む。
長距離輸送削減やEC商品の即納化を優先するなら、物流拠点を分散化した方が効率的だ。一方、逆に拠点を集約化し、物流費をトータルで削減しようとするケースもある。
海外からの輸入衣料を含めた仕組み作りも重要だ。西松屋チェーンは、荷揚げ港を増やし、国内輸送を減らす取り組みを試験的に開始した。こうした内航船の活用のほか、モーダルシフトも少しずつ進むだろう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、物流全体を可視化し、効率的な運用を目指す動きも加速する。在庫抑制、納品スケジュールや配送体制の最適化などが進めば、効率化やコスト削減に大きな効果を生む。
納入回数など改善へ
問題解決に対する認識は共通でも、道は容易ではない。例えば量販店向けの衣料納品。現状は週2回納品が基本であり、これを週1回にすれば、単純にトラック輸送は半減する。ただ、集中によって、納入側の業務負担やドライバーの1日の労働時間が増える懸念もある。深夜作業が発生しがちな百貨店の開店前納品もメーカー・流通・物流業者などが一体になって取り組むことが不可欠だ。日本アパレル・ファッション産業協会などが改善に向けた取り組みを本格化し始めた。大きな社会的課題を解決していくため、個社や個別業界の利害を乗り越えていくことが、ファッション産業全体の魅力アップにつながっていく。
(繊研新聞本紙23年12月19日付)