【ニュース2021⑤】大型商業施設への休業要請と協力金 政府の不明確な方針・制度で業界に混乱

2021/12/30 06:28 更新


 4月25日からの緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に伴う国からの百貨店、SCなど大型商業施設に対する休業・営業時間短縮要請と要請に応じた事業者に対する協力金(大規模施設等協力金)は業界を混乱させ、行政に対する大きな反発と不満を生んだ。

自治体で異なる対応

 政府が4月25日からの緊急事態宣言発令と大型施設への休業要請、協力金の概要を発表したのは4月23日。日本百貨店協会と日本ショッピングセンター協会は国の休業要請の動きを察知し、4月15日から政府や東京都などの自治体に対して、大型商業施設の休業要請からの除外と、要請した場合の「実態に合わせた補償」を要望していた。「生活必需品」は休業要請の対象外となったものの、4月23日に政府が発表した最初の1日当たりの支給額(大型商業施設1館20万円、テナント・出店者1店2万円)は「実態」とは大きくかけ離れていた。この支給額は水面下で政府関係者が業界団体に事前に打診、団体側が「あまりにも少額」と反発したが、反映されなかった。

 休業要請は国の「基本的対処方針」に基づきながら、自治体が独自判断で実施できる。そのため、自治体によって対応が異なり、業界は混乱した。特に「生活必需品」の一部解釈が自治体によって分かれ、同じ品目でも営業できた自治体とできなかった自治体が生じた。

「実態と大きくかけ離れた」額の協力金への不満は大きい(イメージ)

〝想定〟が誤解生む

 協力金を巡る混乱と反発は続いた。政府の方針が定まらず、支給額や対象など制度設計の見直しが重ねられた。特に、百貨店と取引する消化仕入れ型店舗など、テナント事業者以外への支給を巡る混乱は大きかった。政府は百貨店と消化仕入れ契約などを結ぶ店舗を「特定百貨店店舗」とし、その分の支給については自治体がいったん百貨店に支給した上で、「百貨店が最終的に特定百貨店店舗に支払われることを想定」と6月4日付の自治体向け事務連絡文書で記載。この「想定」という表現が誤解を生み、取引先に支払わない意向を示す百貨店が相次ぎ、出店者から不満が噴出した。

 政府は7月28日に協力金の出所である地方創生臨時交付金のホームページに「最終的に店子に支払うことになる」と初めて明確に記載し、29日にホームページなどに政府の通達内容を掲載、百貨店に対しても特定百貨店店舗への支払いを事実上要請した。既に多くの自治体で申請受け付けから1カ月近くが経過していた時期だけに、出店者だけでなく、百貨店からも不満が噴出した。

 国の方針と制度設計の不明確さ、運用を自治体に「丸投げ」するような姿勢が混乱につながった。今後、事業者への休業要請と協力金の支給が必要になった場合、教訓として生かすべきだ。ただし、18歳以下の子供向けの10万円給付を巡る自治体の反発と政府の方針転換を見ると、教訓はまだ生かされていない。

(繊研新聞本紙21年12月23日付)



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