ファッションビジネスを行う上で、「サステイナビリティー」(持続可能性)、「サステイナブル」というキーワードを避けて通れなくなってきた。
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ビジネスの前提に
サステイナビリティーは、地球環境や社会、経済が将来にわたり、持続的に成長し続けるための活動や考え方を指す。ファッション企業は多様なアプローチが可能だが、素材や工場の労働環境を起点とする企業が目立つ。特に素材は、資源やエネルギー、労働を結集して生産しており、温暖化や廃棄物、水不足といった地球環境の多くの課題と密接に関わる。また具体的な数値や達成率により、取り組みの成果が分かりやすく、ステークホルダーにアピールしやすいこともある。
なぜサステイナブルな取り組みやエコロジー素材への注目度が急に増したのか。欧州を中心に地球環境への関心が高まり、ファッションに波及してきたのがひとつ。そのきっかけとなったのが15年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と、同じ15年に締結された気候変動の抑制を目指したパリ協定だ。各国政府に委ねるだけではなく、民間企業の経済活動でもサステイナブルな取り組みは重要とされ、経済活動の推進力としてその後、一気に広まった。またアパレルブランドに対して環境NGO(非政府組織)のグリーンピースが20年までに有害物質排出ゼロを目指す「デトックス宣言」を提唱し、グローバルなアパレル、スポーツ企業などが賛同していることもある。市場を日本中心から世界に広げるにあたり、こうした企業と取り組もうと思えば20年までに条件に見合う素材を使うなどで対応しないと取引してもらえない。つまり商売の前提となってきたからだ。
素材ではリサイクル合繊はここ数年で糸の太さや形状のバリエーションが増えてきた。古着からポリエステル原料を再生する試験工場を立ち上げる日本環境設計に複数の商社が相次ぎ出資したのは象徴的だ。一方でポリエステルを含む合繊の多くは自然分解されず、海洋環境や生物に被害を及ぼすことが懸念される。そのため土の中や海中で害なく生分解される素材への注目度が高まり、開発が進む。
企業価値を左右
グッチが動物愛護の観点からファーの不使用を宣言したり、バーバリーが在庫を焼却していたことについて消費者から非難が集まるなど、地球環境に配慮した取り組みか否かで企業やブランドの価値が高まったり、あるいは毀損(きそん)する社会背景になり、これまでの〝業界の常識〟は通じない。
進んできたとはいえ世界の市場規模と比べるとファッション企業の地球環境に配慮した取り組みはまだまだこれからだ。こうした取り組みはすぐには対応できない。方針を定めた上で着手できるところから始めてはどうか。
(繊研新聞本紙12月21日付)