《新人店長のVMD物語》 ②ギフトは価格設定がキモ

2017/04/15 06:30 更新


12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。

前回、ショップ独自の品揃えを分かりやすくお客に伝えることを学んだ麻紀。今日は新たな課題、ギフトの打ち出しに挑みます。

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11月に入り、南城百貨店の館内もクリスマスムードが盛り上がってきた。今日の店長会議の内容は、クリスマスに向けての売り場作りについてだ。

大谷マネジャーは話し始めた。

「これからギフトの割合が高くなります。しかし、ギフトでも自家需要でも、売り場を作る上で欠かせないことは、店頭の商品をお客様にお伝えすることです。皆さんには日ごろからテーマを決めてもらっていますが、もちろんクリスマス商戦にも、テーマの設定は必須です」


大谷マネジャーの話では、「クリスマスギフト」というテーマだけでは大雑把過ぎるということだった。そしてギフトを購入するお客様は予算を決めているので、テーマを決める際、プライスを切り口に加えること。例えば第1テーマが「ギフト」であれば、第2、第3テーマのいずれかを「プライス」とする。そこがギフトと自家需要との違いだ、と説明した。

麻紀は考えた。

「前にいたファッションビル内のルクリアでは、最も売れるクリスマスギフトは5000~6000円だったから、去年ここでも同じ価格帯にしたんだよなあ。でも、ここはお母様とお嬢様の2人での来店も多いから、お母様からのギフトなら少し高めの商品も売れるかも…」


会議後に大谷マネジャーに聞いたところ、1万~2万円でも良いのではないかとアドバイスされた。いくらで何を売るべきか、麻紀はスーパーバイザーの瞳に相談することにした。

「……ということなので、今年は思い切って高い価格の商品をギフトとして打ち出してみようと思うんです。購入者を40~50代にして、プライスは従来の5000~6000円の他に、1万円、1万5千円、2万円に設定してはどうかと思うんですけど、いかがでしょう?」


「そうね~、2万円は高い気がするなあ。でも、百貨店はそのくらいでも売れるのかもしれないから、そうしてみようか。じゃあ、それぞれのプライスに当てはまる商品をリストアップしてくれる?」

麻紀はクリスマス商戦で売りたいものを整理することにした。

価格別にみると、5000~6000円はカットソー、ニット、マフラー、手袋だ。1万円はニット、ブラウス、スカート、パンツ、1万5千円はブラウス、ワンピース、2万円はジャケット、コートだ。単品だけだとバリエーション不足だと感じた麻紀は、2アイテムを組み合わせて打ち出すことを思いついた。

1万5千円はニットとマフラーか手袋を組み合わせ、2万円はブラウスかニットにスカートかパンツを組み合わせる、そのコーディネートを見せてクリスマス商戦に挑もうと考えた。


まずは1万5千円の「ニットとマフラー」と、「ニットと手袋」をお店の前面で見せることにした。お客様の反応を見て、次は1万円を打ち出すか、それとも2万円を打ち出すかを決めるつもりだ。

テーマを絞ることで品揃えが伝わる。そしてギフト対応の商品を売る場合はテーマの一つに価格を入れること。理由は購入者には予算があり、いくら気に入っても予算をオーバーしていると購入してもらえないからである。そしてターゲットを改めて設定し、プライスラインを見直すことでギフト商品の売り上げを向上させることもできる。

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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。

(繊研新聞2013年に販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)



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