ロンドンに登場。ジャパン・ハウスって何?(若月美奈)

2018/06/26 16:00 更新


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世界のより多くの人々に日本の魅力を伝え、日本に対する理解と共感の裾野を広げることを目的に外務省が開設している海外事業拠点「ジャパン・ハウス」が、ロンドンのケンジントンハイストリートにオープンした。 2017年4月のサンパウロ、12月のロサンゼルスに続く、3都市目。プロジェクトとして予定していた3カ所が出揃った形となる。

あれっとお気付きの方もいるのでは。そう、前回のコラムで「ロンドンは今、西が旬?」と題して、ケンジントンハイストリートをはじめとるする、西ロンドンから目が離せないという話をしたばかり。さすが、なのか、たまたまなのか(失礼!)。ともあれ、これからますます話題を呼びそうな場所でのグランドオープンというわけである。

その内容を紹介する前に、この場所についてもう少し触れたい。

地下鉄の駅から徒歩1分、地上2階、地下1階のアール・デコ様式の建物は「ギャップ」の跡地。そしてなんと、70年代には、あの伝説のブランド「ビバ」があった場所なのである。

60~70年代にファッション好き、ロンドン好きだった方々は、それを聞いただけでワクワクしてしまう。ポーランド出身のバーバラ・フラニッキが1964年に小さなブティックとしてスタートした「ビバ」は、デカダンな独自のムードのデザインが話題を呼び、あっという間に一世を風靡。73年にこのケンジントンハイストリートの大きな建物に、服や小物だけでなく、食料品など様々な商品を揃えたデパートメントストアを構えた。

まあ、事業拡大に失敗し、75年には閉店してしまったので、この場での命は短かったのだが・・・

JAPAN HOUSE London  101-111 Kensington High Street, London W8 5SA

さて、その建物にできた「ジャパン・ハウス」は、伝統工芸から最新テクノロジーまでを網羅した、日本のアート、デザイン、食文化やイノベーションを紹介すべく、選りすぐりのものを集結。ギャラリー、ライブラリー、小売スペース、カフェ、レストランなどが揃う。

ワンダーウォールの片山正通さんによるインテリアは、明るく広々としながらも、凛とした重厚感が漂う居心地のいい空間。中央の螺旋階段で、3フロアが繋がっている。

1階入り口を入ると、まずはテイクアウトのカフェカウンターがあり、各種の日本茶が飲める。それを持って、奥にあるコーヒーテーブルと椅子が並ぶスペースでくつろぐのも良し。

カウンターの後ろは広い小売ペースになり、食器やインテリアグッズ、キッチン用品、文房具、バッグ、スカーフ、ジュエリーなどなど、150ブランドが揃う。日本各地から集められた優れものたちには、それぞれのブランドの紹介プレートが置かれ、ミュージアム気分で見るだけでも楽しい。

山梨の「紙和」の和紙でできたバッグ、今治の「コンテックス」のタオル、東京の「トリコテ」のソックス、兵庫の「玉木新雌」のショールなど、ファッション・テキスタイル関係の商品も多い。コムデギャルソン出身の相澤あかりさんがデザインする「カルネ」のバッグも目を引く。

「SIWA/紙和」は山梨の和紙産地、市川大門の和紙メーカー大直が工業デザイナーの深澤直人さんと組んだ和紙グッズブランド。ガラス張りになったコーナーには、ハンドバッグやポーチなど様々な小物が並ぶ。
「玉木新雌」のショールと「トリコテ」のソックス。

ショップのキュレーショーンを手がけたウェルカムの加藤さえ子さんは、2年前にこのプロジェクトに加わり、ロサンゼルスとロンドンの2カ所の商品を揃えた。同じものもあるが、気候や生活様式を考慮してそれぞれ選び分けているという。

ロサンゼルスはカジュアルなもの、ロンドンはスマートなもの。あるいは、大きな住居でホームパーティーを楽しむロサンゼルスでは大きめの器を、東京に近いコンパクトな住居のロンドンでは小さな器を揃えるといった具合に、現地の人々の意見を聞きながら商品を選んだ。

「中でも人気が出そうなのは、「WASARA」の食器」と加藤さん。一見陶磁器のような表情をした美しい紙の器は、土に還る素材で作られたサステイナブルなグッズ。環境問題に敏感なロンドンの人々の心をつかむこと間違えなしといった感じである。

右手の壁沿いにはバッハの幅允孝さんの選書による書籍が並ぶ。ここにある本は売り物だが、地下には小さなライブラリーもあり、コムデギャルソンの「SIX」、「サカイA to Z」が、「AKIRA」などと一緒に棚に並んでいる。

1階奥には日本政府観光局のコーナーもあり、日本を旅行したい人々に様々なアドバイスを行い、その目的にあった旅行代理店の紹介も行う。

ショップのディレクションを担当した加藤さえ子さん。17年前に販売員としてウェルカムに入社し、その後バイイングやプロモーション、イベント企画などを担当。11年前には国立新美術館のミュージアムショップも手がけた。
環境にも優しい「WASARA」の紙の器

2階は食。料理はもちろん、おもてなしの文化を伝えるその代表選手に選ばれた清水明シェフによる「AKIRA」は、オープンキッチンが見渡せるカウンターとテーブル76席の広々としたレストランで、寿司と炉端焼きがメイン。

日本酒と洋酒が楽しめるバーカウンター、さらには掘りごたつになった畳の個室もある。

レストランルームのインテリアデザインは片山正通さん。ファニチャーは「ジョージ ナカシマ デザイン」。撮影=Lee Mawdsley
たくさんの日本レストランがあり、スシがハンバーガー同様のファストフードとして定着しつつあるロンドンで、これまで見たこともないような革新的な日本料理を提供する。

地下には展覧会やセミナー、ワークショップを行うギャラリースペースとミニシアター、先ほど紹介したライブラリーがある。ギャラリーでは現在、建築家の藤本壮介さんの「未来の未来」展を開催中。

ギャラリーのオープニングエキジビションを飾る藤本壮介さんの「未来の未来」展。8月5日までの開催。

館内を案内してくれた企画局長のサイモン・ライトさんは「ここは日本が凝縮された場所。小さなものから7000ポンドの盆栽まで様々な商品も揃う、あらゆる人々のための空間です」と語る。

もっとも、レストランはかなりお高めで気軽にお食事というわけにはいかない。小売スペースに並ぶ商品も英国の付加価値税(VAT)は20%と日本の消費税よりはるかに高いこともあり、日本での価格の1.8倍から2倍程度する。

それでも、ついつい何か買ってしまいそうな、スマートな魅力に包まれている。英国に住む様々な国籍の人々はもちろん、成熟したオーガニックでスタイリッシュな日本を再発見したい日本人にもおすすめの最新スポットである。

企画局長のサイモン・ライトさん。1階のショップスペースで。右後ろにあるのが、ここで一番高額という7000ポンドの盆栽。


あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員

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