バービーが教えてくれること(若月美奈)

2016/02/15 16:59 更新


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先月末のことだが、新しいバービー人形発売のプレスリリースが届いた。そこには、様々な肌の色や髪型をした、様々な体型の人形が勢ぞろいした写真があった。

 

 

 

 1月28日にアメリカのマテル社がバービーのファッショニスタスラインの2016年バージョンとして発表したもので、自社サイトでは28日当日からオーダーを受け付け、世界の小売店で3月末から発売される。

従来のボディシェープに加えて、長身、小柄、ぽっちゃりを加えた4種類の体型、さらには肌の色7種類、目の色22種類、ヘアスタイル24種類が揃う。これだけ揃えば、どんなお嬢さんも自分と似たタイプのバービーを持つことができるというアイデアだ。

このリリースを受け取った時には、さらりと流した。だって、アメリカのニュースだし。

しかし、翌日英国のテレビや新聞が一斉にこのニュースを取り上げたのには驚いた。それも、ドーンと大きな写真を使い、拒食症関連のチャリティ団体による歓迎のコメントまで掲載されていたりする。痩せ過ぎモデル問題や人種差別問題のアクティビストたちに大いに歓迎されたことは言うまでもない。

ロンドンに住み初めて間もない頃、そう、25年以上も前のことだが、あるテレビ番組で、小さな黒人の女の子が、「私の肌はブラウン。だから、このブラウンのお人形がいい」と言って、数ある人形の中から、ブラウンの肌のものを選んだのを覚えている。

様々な人種の子供達が集まる英国では、人形もいろいろ必要なのだということを知った。そしてそれ以上に、金髪の人形を喜んで持っていた日本人の自分との違いに距離を感じた。

そう考えれば、今回のバービーは今更のことなのかもしれない。まあ、これまであまり見なかった東洋系の顔まであるのは、現在を象徴しているわけだが。

そして私の個人なことを話すと、このバービーの写真は、ここ最近の2つの取材で実感したことをストレートに反映している。

1つは、世界最大のファッショントレンド提供会社WGSNのロンドン本社取材。その内容は4月に発行される「senken h extra」で紹介するが、ロンドン中心のピカデリーサーカスにある本社、とりわけクリエーティブチームの部屋で目にしたのは、本当に様々な人種、様々な体型、様々なファッションの人々が集まっている現場だった。

それはまさに、このバービーたちのよう。国際都市ロンドンの縮図を見るようだった。

そしてもう1つの取材は、昨年末に訪れた英国人のケビン・ハウスさんが経営する日本のデザイナーブランドを集めたレディスセレクトショップ。

店名は「BUTIKKU」。つまり日本語のブティックで、アルファベットに加えてカタカナでも表記している。日本の商品への信頼度は高く、日本のものだとわかるとより売れるということで、当初は別の店名だったが、昨年から「ブティック」に変更し、カタカナも表記するようにしたそうだ。

固定店舗はないが、ロンドン各地にオープンするポップアップショップとオンラインで 「ヤストシエズミ」や「ソマルタ」など20ブランドの服や小物を販売している。

ほとんどのブランドが、日本以外での販売は初めてだそう。となると、まず気になるのはサイズの問題である。ところが、「サイズは問題ない」とケビンさん。あまりサイズに左右されないデザインや、大きめのものをオーダーすればいいという。

それよりも、問題なのは・・・

それは、シルエットだそうだ。具体的にはウエストの絞り具合で、日本のデザイナーの服の多くが、細身のワンピースであっても、ウエストをあまり絞っていない。だから、お客さんが試着をすると、サイズはピッタリでも、ここが余る、ここが余ると言って、脇腹の部分の布を引っ張るのだそうだ。

「僕が見れば、まさにぴったり身体にあっている。きっと、デザイナー本人が見ても、パーフェクトフィットだと言うでしょう。でも、お客さん本人はウエストまわりが大きいと言って躊躇するんです」。

そう言われてみれば、私自身は常に全くその反対の経験をしている。

「ロクサンダ」や「アーデム」といったちょっとグラマーなブランドはもちろん、「クリストファー・ケイン」や「プリーン」などのエッジーでボーイッシュなブランドのワンピースでさえ、ロンドンの新進デザイナーの服はウエストがキュッと絞ってあり、そこに違和感を感じて、試着をしても買わないことが多い。

ウエストを絞ったシフトドレスはエレガンス系に任せておけばいい。エッジーなブランドのものではない。といった固定観念がどこかにあり、さらに、ある程度年齢のいった女性が着ると、おばさん丸出しになってしまうと思うのである。まあ、実際50過ぎた立派なおばさんなのですが・・・

80年代のインポートブームの頃、よく西洋の服は丸いと言われた。日本の洋服に慣れた女性がインポートのデザイナーブランドを着ると、その立体感に驚いたものだ。まさに、ウエスト、さらには前後だけでなく横がある服。

その違いは着物という日本の伝統からくる服の国民性のようなものだと言われていたが、それ以上にコムデギャルソンやヨウジヤマモトによって確立された性を突き放した美意識の影響が大きいように思う。その美意識を引き継いだ次の世代、さらに次の世代と、日本のデザイナーブランドはずっと、西欧のデザイナーとは違った目線でボディシェープと対峙している。

話が長くなったが、ロンドンの街には世界中の様々な体型の人々が集まっていて、北ヨーロッパの人々は大柄が多いが、日本人の平均体型の私よりも小さな人もたくさんいる。まさに、このバービーのようなバラエティーに富んだ人々がお客さんなのだから、体型が違うということはそれほど問題ではない。

でも、どんな体型でもウエストを絞ったワンピースに慣れ親しんだ人たちにとっては、服のシルエットが違うという違和感は譲れないのである。ちなみに、そうしたこともあり、「ブティック」の顧客は体型を隠したくなる、40歳を過ぎた女性が中心だそう。

それにしても、ウエストの上にお肉がのり、その下のお腹も背中もパンパンに膨らみながらも、ボディーフィットの服を着たがる大変ふくよかな若い女性たちの気持ちは、未だに理解するに至っていない。

 

 
ずらりと様々なタイプの女性が揃うバービーのファッショニスタ2016は、ロンドンのファッション小売店の顧客の縮図



あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員

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