MDが使う「算数」をショップ運営に役立てよう!《第3講》㉑(佐藤正臣)

2023/08/09 06:00 更新


(第2項)目標設定・管理の重要性

5.売上の公式とは?⑥

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前回の講義では、客単価=1点単価×SET率という計算式から、SET率をアップさせる方法を考えてみました。

今回は、残りの1点単価について考えていきましょう。



前回の講義で、1点単価はマーチャンダイザー(以下MD)にとって重要な指標と仰っていましたよね?



Dさんの仰る通り、商品の価格設定はMDにとって重要な仕事です。MDが仕事を遂行する上で意識しなければならない“5適”というものがあるのですが、その中で“適価”というものがあります。



私がせんせのMD講義を受講した際に、(MDが)商品の価格設定を考え実施することは、ブランド・ショップコンセプトに直結すると仰っていましたよね。私も部長になってからも、商品の価格設定に関することは、常に意識して仕事をしています。



Dさん、ありがとうございます。商品の価格を決める権限というのは、(基本的に)MDが持つ権限の中でも重要です。何故なら、お客様が商品を購入される際に、商品の価格を意識して商品を購入されるお客様が多いからです。

このことを、更にわかりやすく言えば、セール初日などは、お客様で混雑するショップが多いことからも、お客様の価格に対する意識の高さが伺えます。ショップ側が商品の価格をコントロールできにくい側面があるので、前回は1点単価ではなく、先にSET率に関することを皆で考えました。



なるほどです。せんせなりに、色々気を遣っているのですね(笑)



ここからは私の経験上の話になりますので、必ずしも正しいというわけではないのですが、1点単価が、ブランド・ショップの売上好調時に比べて、同月比で±10%になっている場合、ほぼ間違いなく売上が下がっています。お客様の視点で見れば、1点単価が±10%にもなれば、最早別のブランド・ショップになったとも捉えられますし、お客様はそれだけ価格に対して敏感だということです。



せんせ!お言葉ですが、価格が高くなればお客様が減り、売上が減少することがわかる気がするのですが、価格が安くなった場合は、お客様が増えて売上が増加するケースもあるのではないですか?



確かにDさんの仰る通りです。実際、セールの1週目などは飛躍的に売上が伸びることも多いですよね。

セールのようなイベント時を除いて1点単価が10%も下がる場合は、商品が売れないから売変施策をしている(この場合は粗利率の推移をみればわかります)もしくは、価格を下げた分だけ商品も安っぽくなってしまい、そのことをお客様に気づかれて、元々のブランド・ショップのファンであった方が離れてしまった!などが多いですね。



なるほど~。そのような見方も出来るのですね( ..)φ



先述しましたように、ブランド・ショップのMDにおいて、価格を設定することは、ブランド・ショップコンセプトに直結しますから、元々の商品の価格設定を変更する場合は、見方を変えればリブランディングしていることと同義になります。その場合は、ファンであるお客様にしっかりと告知することが重要だと思います。



勉強になります( ..)φ。

あと一つ質問があるのですが、昨今、原料価格の高騰で、弊社の商品も値上げをせざるを得ない状況です。ですが、値上げを告知した場合、客数の低下による売上の低下を懸念して、お客様に告知することを迷っているのですが、せんせはどう思われますか?



これはあくまで個人的な意見になるのですが、私ならば告知します。

告知したことで、一時的に売上の減少を招くかもしれませんが、値上げの理由をお客様に丁寧に説明することで、お客様への理解を得られるよう努力することが何よりも重要だと思います。ブランド・ショップ側は、ファンであるお客様に対する真摯な姿勢こそが、長くブランド・ショップを続けていくには、重要なのではないでしょうか?



へい(''◇'')ゞ。弊社もお客様に対して丁寧に値上げの理由を説明するよう努めます。



Dさん、ありがとうございます。密かに値上げを実行し、(値上げが)バレなければ、それで良いじゃん!という考え方もありなのかもしれませんが、先述したように、お客様は(商品の)価格に対してシビアな目を持っています。

密かに値上げしたことが、お客様に気づかれれば、知らぬ間にお客様からの信頼を失い、客数が低下し売上が低下する、これが一番怖いことです。また、値上げはしないが、その分お客様にもわかるくらいに商品のクオリティーが下がった。こちらもお客様からの信頼を失い、ファン離れに繋がります。



せんせ、ある意味、価格は据え置きだけど、コンビニのカルビ弁当の量が知らぬ間に減っている!みたいなことですね。



カルビ弁当と同じかどうかわかりませんが(;'∀')、それだけお客様にとっての(商品の)価格は重要である!ということを理解してもらえればと存じます。



了解致しました(''◇'')ゞ



これまでお話してきたように、1点単価の推移を追うことは、ショップにとっても重要となります。

ショップの1点単価が過去数年の同時期・同月と大きく数字が乖離し、売上が低下している場合、売上低下の要因は、ショップではなくMDにある可能性大です。ですから、1点単価の増減は、ショップが本部の商品計画(MD)の問題点を指摘するきっかけとなりますので、1点単価には常に注目しておいてください。

あともう一つ付け加えさせてください。実は、ショップで意図的に1点単価を上げる方法があります。Tさん、この方法がわかますか?



わかりません(T_T)



せんせ。では、私が答えます。高単価の商品をショップの売れる場所(VP)におくことです。

特にセレクトショップである弊社は、売上の悪いショップでは目先の売上欲しさに、高単価の仕入商品をショップの良い場所に展開します。一時的に売上は良くなるのですが、後に客数の低下から売上の低下する場合が殆どです。

基本的なショップのVMD戦略は、本部・MDで話し合いますが、地域性に関しては、各エリアマネージャーが本部とショップのつなぎ役となってもらうことで、ショップコンセプトを保ちつつも、(本部が)一方的になりすぎないよう、部長である私を中心に、日々心がけています!



ブラボー!Dさん。本当の部長らしくなってきましたね^_^



いえ(-_-;)現職で部長です。



ということで、今回の講義はこれで終了です。次回は、売上の公式を活用して、実際にショップの目標設定を行います。



では、皆さん。次回もお楽しみに(@^^)/~~~

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佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp



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