三越伊勢丹HD 大西洋社長「営業利益率5%へ」

2017/01/30 17:40 更新


 百貨店事業の収益向上が経営の戦略課題となる。これまでの仕入れ構造改革とともに、コスト削減を両輪に事業・店舗の選択と集中を加速させる。強みである首都圏基幹店の再強化と支店・地域店の新ビジネスモデル作りが本格化する。

 

“百貨店が中心なのは変わらない”

 

■直間比率を是正

――17年度からの中長期計画の重点ポイントは。

 構造改革に具体的に着手します。コスト(経費)は毎年見直してきたが、中期的にはあまり明確でなかった。支店・地域店や関連会社も同様で、あるべき姿を示していきます。支店・地域店は17年秋から、2~3店で具体化します。一方、新規は不動産、カードの2事業が中心となります。

 ――直間比率の見直しは。

 組織ではコーポレート機能のホールディングスを小さくして、事業会社にこれまで以上に権限を移します。今のスタッフの数は多いと思っていますが、単に人を減らすのでなく、1人当たりの生産性を引き上げていくことが基本です。

 外から見ると窓口がよく分からない、という指摘があります。店舗と商品統括部でダブリがあり、今のままでは駄目だと思っています。店舗がもっと権限をもつ商販一致が理想ですが、仕入れ構造改革を加速させることと並行して、組織を見直します。

――百貨店の収益向上が欠かせない。

 百貨店が中心であることは変えません。収益構造は百貨店が6割、その他の事業が4割の比率を維持します。営業利益率5%の達成に向けて、仕入れ構造改革の精度をさらに上げて、売上総利益を高めていきます。

――基幹店の営業力強化は。

 伊勢丹新宿本店は周辺との一体開発の検討を始めています。20年以降の実施となるが、17年度中にはプロジェクトチームを結成したいと考えています。

 三越日本橋本店は本・新館をどうしていくのかが最大の課題です。周辺エリアの大型開発が進展しており、街づくりと連動した店舗作りを視野に入れなければなりません。再開発は20年以降の新宿の次となります。

 伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店のリモデルは18年春から順次実施します。新宿はレストラン、食品に並行して婦人服、日本橋は1~2階を中心に新しい顧客獲得に向けたアート・文化の拠点を目指します。

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“販売員へのインセンティブ、利益貢献に応じて”

 

■インセンティブを制度化

――仕入れ構造改革による粗利益増は。

 仕入れ構造改革の売上総利益率は年間で0.4~0.5㌽改善しています。定番品の商品構成は当初の3割から今秋冬の5割へ高まっています。

 問題は在庫で、赤信号でないが、黄信号の状況にあります。要員などのコストを含めた収益管理システムを4月から稼働させて収支を可視化します。その点でも「ナンバートゥエンティワン」「BPQC」「イセタンメンズ」などある程度の単位になったブランドを早く別会社化した方がいいと考えています。

――販売員のインセンティブ(報奨制度)を16年から導入した。

 仕入れ構造改革による利益貢献額に応じて、スタイリスト(販売員)へのインセンティブを17年度から制度化します。16年度は12ブロック(売り場の最小単位)約100人でスタートしたが、17年度は対象範囲を約4倍に拡大します。全体感としては販売に対する意識向上に結び付いています。

――ICT(情報通信技術)を販売で活用している。

 IoT(モノのインターネット)を活用し、ものを売らない、在庫を持たないショップを今春に作る予定です。VR(仮想現実)では地域店のお客様と基幹店の店頭を映像で結んだ買い物サービスに着手します。そのほか、AI(人工知能)を使った接客サービスなど様々なメーカーと協業してきたが、新しいビジネスモデルに転換し、そろそろ結果を出さないといけないと思っています。



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