リバーレースは「レースの女王」とも言われる高級素材。今も世界トップクラスのデザイナーから支持を集める。その市場で大きなシェアを持つのが栄レースだ。今や世界に130台というリバーレース機のうち87台を保持する。
リバーレースの重要な工程が「ドラフティング」。デザインした柄を実際の編み機にかける上で、糸のテンションなどを予測し、細かい方眼紙のなかに図案を落とし込んでいく。感性に加え根気が求められる細かい作業であり、一人前になるには早くても3年掛かるという。
ドラフティングでは、花柄などをパソコンで拡大しながら作業するのだが、今、澤村徹弥社長は違和感を持ち始めている。拡大することで、花柄そのものに焦点を当てて作業しやすい。ただその半面、「柄全体を見渡すと、どうも〝木を見て森を見ず〟のような感覚のデザインになっているような感じがする」。
同社は今、方眼紙の中に鉛筆で手描きする昔ながらの手法を検討中だ。「全員が反対していますが…」と澤村社長は苦笑いする。繊維・ファッション業界でも業務を効率化し、スピードアップする流れが加速している。急速な技術の進展に後押しされ、組織や個々人の仕事の中身も大きく変わっていく。そうした変革の最中だが、「元に戻した方が良いことは無いか」と不断に振り返ることも大切なのだろう。