収益性の改善を進める帝人の内川哲茂社長は、記者懇親会で「(以前と比べて社としての)実行力を失ってしまった」と嘆いた。帝人は事業買収を繰り返し、現在の姿がある。「外から入ってきた人も多く、成り立ちは様々。そこにコロナ禍のコミュニケーション不足が加わった」ことで、経営陣と社員、あるいは社員間で(実行力の源となる)「社会から必要とされているという存在意義の共有が薄くなった」と原因を分析する。
帝人のテレビCMといえば「だけじゃない、テイジン」が有名。しかし今大事なのは、「だけじゃない、よりも、何が帝人か(というアイデンティティー)」と若者の応援などメッセージ性の強いCMに変えた。
実行力を取り戻すために自社の存在意義を話し合い、「社会課題、困り事を解決し、未来を支える」という価値観を育み、共有する場づくりを始めた。
祖業である繊維・製品事業は好調だ。「自社製品だけでなく、幅広い調達網を生かすなど学ぶべきことが多い。大切な事業」と評価する。
ダイワボウホールディングスは大和紡績の株式の85%を投資会社に売却することを決めた。祖業にこだわりすぎると時代の波に取り残される恐れがある。一方で、祖業があるからこそ踏ん張りが利き、企業のアイデンティティーが保たれることもある。答えが出ない、難しい問題だ。