《めてみみ》売れ筋と見せ筋

2023/10/17 06:24 更新


 オリジナルが主力のある小売店は、シーズン終盤に在庫消化のためにファミリーセールを開催する。会場に並ぶのはやむを得ない理由で返品されたり、サイズや色が合わずに売れ残ったりした商品だ。今夏の終わりのセールで、その小売店の社長があることに気づいた。

 コートのラックに定番のベージュや黒はなく、見せ筋として企画した色だけが全サイズ並んでいた。デザインが支持されても、特定の色だけ売れ残る商品は毎シーズン一定数出る。ただ、会場に並ぶ他の商品を見渡すと、定番ではない見せ筋の色だけが全サイズ売れ残っているケースが目立った。

 確実に売れる色で10枚作ったら、品揃えに彩りを添える色は1枚で良いという考えを徹底してきた。だが事業規模が拡大し、店舗数が創業時の10倍に増えていく過程で、売れ筋の色が100枚なら見せ筋の色も10枚と生産量が比例して増えていた。

 個店時代はシーズン立ち上がりに全色、全サイズを店頭に並べることが客の期待に応えることだった。多店舗化し、ECでも売るなら、全色を全店に均等に入荷する前提での生産は量が多い分、売れ残る確率も上がる。

 小売店が成長すれば、FKU(売り場に出す型数×色数)とSKU(在庫最小管理単位)のずれは大きくなる。店数ではなく、欲しい人の数で判断することが肝要だ。



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