デザイナーの交代劇が日常茶飯事になっているパリのファッション界で、またしても期待の若手デザイナーが大きなブランドのトップに座った。オランダの注目デザイナー、デュラン・ランティンクが「ジャンポール・ゴルチエ」のクリエイティブディレクターに就任した。
ニューヨークの「ヴァケラ」、ストックホルムの「ホダコヴァ」と並んで注目の若手の一人だっただけに、複雑な思いだ。クリエイションで注目を集めても、結局は自分のブランドのビジネスに執着せず、大きなブランドに就職する。そこに今のファッション界の抱える問題点があるような気がしてならない。
インポートビジネスを手掛けるある社長は「今の問題点はデザイナーの出口戦略のモデルが一つしかないこと」と語る。つまりデザイナーとしてのキャリアの出口が、ビッグブランドのディレクターになって自分のブランドも買ってもらって巨額の退職金で引退するモデルしかないというのだ。振り返って見ると、クリエイションをベースに世界でビジネスを拡大できたインディペンデントブランドというと「サカイ」あたりが最後なのかもしれない。
力のある若手デザイナーが、自らのビジネスを拡大するのが困難な時代。ファッションウィークの役割も揺らぐ。デザイナーの新たな出口戦略の構築が求められている。