以前は多くの観光客であふれていた香港がコロナ禍にあえいでいる。2月の観光客はわずか2600人強。18年には年間約6500万人が訪れ、過去最高を更新していた。18年までさかのぼるのは特有の理由からだ。
19年6月、「逃亡犯条例」改正案に反対するデモが起こり、反政府運動に発展、観光客が激減した。経済はコロナ禍前から低迷していた。20年には「香港安全維持法」(国安法)が施行され、政治的な中立性は失われた。ただ日系企業の駐在員に国安法の事業への影響を聞くと「ほぼない」という。
香港で観光客が激減したままなのは、中国本土と同様〝ゼロコロナ〟を目指すためだ。渡航が厳しく制限され、原則14日間のホテル隔離が強制される。一時期、市中感染はほぼゼロで、経済は回復しつつあった。しかし今年に入りコロナの第5波に襲われ、経済は急速に悪化した。
タイやベトナムなどは隔離なしで渡航できるようになった。観光客の受け入れが経済回復に必要と判断したからだ。香港政府も動いた。4月から隔離期間を7日間に短縮するという。しかし香港では感染拡大が収まっていない。第5波の累計感染者は100万人を超えた。香港の人口は約740万人。全人口の15%近くが第5波だけで感染した。この状況下で規制を緩和すべきかどうか、難しい判断だ。