東京から地方に移住したデザイナーから「サステイナブル(持続可能)という言葉は使わない」と言われ、ハッとした。もちろん、その人はサステイナブルの理念に理解を示し、自分のブランドの服を生産する過程で出た端切れをアップサイクルしたストールを作って販売するなど地道な活動を続けている。ただ、それを売り文句として声高に主張することはない。
「サステイナブル」という言葉があふれ、トレンドのように消費されることに危機感を持つ人は多い。ファッション業界では新ブランドや新ショップを発表する際の決まり文句のようでもある。取って付けたように安易に使われることも多く、目に余る状況だ。
地方の個店のオーナーからも「ファッション業界のぬるま湯につかり切っているとリアルな顧客を見失ってしまう」と言われた。このオーナーも自店のオリジナルブランドを同じ県内の縫製工場で生産するなど「地元の産業を守りたい」との思いが強い。だからこそ、業界を俯瞰(ふかん)した視点を持ちながら、自分たちのできることから始めているのだろう。
サステイナブルの理念や活動を本気で広げるためには、シーズンサイクルの考え方、セールの在り方、コスト優先の海外での大量生産など、これまで何の疑いもなく従ってきた業界の常識は見直さなければならないだろう。