《めてみみ》古い商品を売る力

2020/10/16 06:24 更新


 「提案する側が、そのサイクルで客に変化を感じさせるためのものがMD」。ある百貨店マンの言葉が頭に残っている。商品展開計画と言われるMDの、最も理解しやすい説明に感じたからだ。シーズンや歳時記MDは季節の移り変わりを、52週MDの場合は〝鮮度〟を感じてもらうためと言えるだろうか。

 今年らしさを取り入れた新しい物を提案するのが、MDの常識。52週なら52回、新しい提案が必要だ。コーディネートや色で提案に変化を付ける場合も多いが、型数や投入数量が膨らむ要素になる。最後はセールで消化するシナリオだが、そのセールが低調で、在庫がたまる構図が続く。

 今春夏は臨時休業による販売機会の消失から、長期間の値下げ販売で在庫の削減に取り組んだブランド・ショップが多い。店頭はようやく秋冬物一色となった。ただ、入荷遅れや提案商品量の圧縮で、売り上げが伸び悩むショップもあると聞く。従来通りのMDを組めない状況にある。

 毎日、全てを今シーズン物で過ごす消費者はいるのだろうか。昨シーズンあるいはもっと前に購入した、お気に入りの服などと組み合わせる人が大半だろう。今後、値下げ販売を前提としない服作りやMDがベースになるとすれば、〝古い〟商品を組み合わせ提案できる販売力やディスプレー力が問われるのではないか。



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