《めてみみ》ニセ進化論

2020/07/06 06:24 更新


 ダーウィンの進化論を誤用した言い回しで憲法改正の必要性を訴えたとして、日本人間行動進化学会が6月末、自由民主党に対する批判声明を出したことで、認識を改めることができた。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」という言葉はダーウィンのものではない。調べてみると誤用・誤解は数多く、繊研新聞にも外部執筆者によるものだが掲載されている。

 ある経営学者がダーウィンの考えを独自に解釈して論文を執筆、引用が重ねられるうちに変化しながら誤って伝えられるに至ったようだ。変化する努力を続けることがビジネスにとって欠かせない、といった文脈でも使われてきた。

 立ち止まって考えれば、「ニセ進化論」のおかしさはすぐ分かる。「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスはなぜ、変化しないのに生き残っているの、とか。同学会の声明。「ダーウィンの言う進化はランダムに発生した変異の中から環境に適さない者が淘汰(とうた)されていく過程」と指摘する。

 かつてのように自由な行動ができず、先が見えない時代ではあるけれども、焦るあまり、あらぬ方向へと変化を急ぐと取り返しのつかないケガをする。情報をよく吟味し、しっかりと判断することが生き残る道につながる。



この記事に関連する記事