バンコク伊勢丹は8月末で店舗閉鎖する。中心部のスクンビット地区にあり、バンコク最大級のSC、セントラルワールド内で28年間営業を続けていたが、近隣で大型SCの開業が相次ぎ、競争が激化していた。中国や東南アジアでの「規模の競争」の中で、日系百貨店が生き残る難しさが改めて浮き彫りになった。
進出当初はドル箱の一つだったバンコク伊勢丹も、近年は業績が低迷していた。急速な経済発展による消費拡大で、バンコク中心部は10万平方メートル超の巨大SCが乱立する。SC間の競合による集客力の低下だけでなく、地代・家賃や人件費が高騰し、収益を圧迫していた。
日系百貨店の海外進出は商業施設の核テナントとして百貨店単独型の出店がほとんどだった。「従来のビジネスモデルで売り上げ減が続けば、定借化や賃貸区画の一部返上など自営面積を縮小せざるを得ない」(杉江俊彦三越伊勢丹ホールディングス社長)という。家賃の低減や要員の削減など損益分岐点の引き下げには限界がある。
海外事業は従来の百貨店業からPM(不動産の運用・管理)を含めた商業・不動産事業への転換が急がれている。一方で新潟三越が3月22日、前身の小林百貨店の時代を含めて113年の歴史に幕を下ろした。国内外を問わず、従来の百貨店ビジネスモデルからの転換は避けて通れない。