今年の東京五輪・パラリンピックで、インバウンド(訪日外国人)消費が落ち込むクラウディングアウトが懸念されている。これは「押し出す」の意味で金融・財政の用語。特定分野への需要の増加が、他への需要を減少させてしまうことを指す。
観戦客の上積みはあるが、混雑や費用高騰で買い物目的のインバウンドが減少する。12年ロンドン五輪で、英国では外国人旅行者数が大会期間を含む7~9月に限ると4.2%減少した。東京でも同様の事例が発生するだろう。
開催は五輪が7月24日~8月9日(一部競技は7月22日から)、パラリンピックが8月25日~9月6日。大会期間中は選手や大会関係者、メディア、観光客など約1000万人が東京を訪れる。都心部は交通規制もあり、首都高の渋滞が2倍に悪化、鉄道利用者が1割増加すると予測される。
影響はインバウンドに限らない。混雑緩和に向けて企業・個人による時差出勤、テレワーク、夏季休暇などの対策が取られる。都心部への不要不急の外出は避けることになりそうだ。
都心立地の百貨店や商業施設はすでに国や都から大会期間中の来店促進イベントなどの自粛を要請され、セールの前倒しが検討されている。物流業者からは「期間中の集荷や配送はできないと通告された」(都内百貨店)という。夏枯れが心配だ。