《めてみみ》納得の理由

2019/05/20 06:24 更新


 20年以上使っていた夏用のラグがさすがにくたびれてきたので買い替えたのだが、5年もしないうちにボロボロになった。以前のものは量販店でそこそこの値段で買ったもの。買い替えたラグは、量販店の売り場がなくなったのでホームセンターで買った。値段は安くなって喜んだのだが、丈夫なのか気になっていた。

 全米1位の小売業だったシアーズ・ローバックがディスカウンターに売り上げを抜かれたのが80年代。その理由を米国流通業の事情通に尋ねたことがある。「シアーズは100ドルするが30年以上もつ金づちを売っている。消費者が選んだのはディスカウンターの10年ももたないが10ドルの金づちだ」と説明してくれた。当時の米国経済は回復に向かいつつあったが、深刻な景気停滞の後遺症もあり、消費者は安さを求めたのだろう。

 今の日本もそれに似て、「高いものは売れない」とよく聞く。多くの売り場が安いレンジにシフトし、かつて扱っていたボリュームゾーン以上の価格帯は姿を消してしまった。買い回った店の価格レンジでは、丈夫な夏用ラグは実現できなかったのだろう。

 多少高くても丈夫なもの、おいしいもの、風合いのいいものへのニーズはあるし、取り組んで成功している店もある。ニーズを取り込むには、高い理由を説明し、きちんと納得してもらうことだ。



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