《めてみみ》平和が残すもの

2018/04/27 04:00 更新


兼六園

 明治維新150年を記念して全国で様々な取り組みが進んでいる。維新の原動力となったのは薩摩・長州・土佐・肥前。各藩のあった鹿児島や山口などで記念イベントが相次ぐ。比較的イメージの薄い肥前・佐賀でも幕末維新記念館などが開業し、来年の年明けまで博覧会を開催している。

 いずれも江戸時代を代表する大きな藩である。藩の規模を示す石高収入は薩長土肥の順に77万石、37万石、24万石、36万石と続くが、実際は米以外に貿易や地場産品の販売などで膨大な収入があったと聞く。

 これら4藩としばしば比較されるのが、100万石の加賀藩。藩の大きさにもかかわらず、維新期には藩、あるいは個人としてもほとんど名前が挙がってこない。一説では、徳川幕府に警戒されるのを恐れ、政治向きのことにはかかわらず、文化や芸術の発展に専心したためだという。

 ただ、結果的に加賀藩の中心地、金沢には豪華絢爛(けんらん)な文化が花開いた。戦災がなかったこともあり、名園の兼六園や昔の面影を色濃く残す茶屋街など見どころが多い。絹織物の伝統も今日の合繊産地の強みにつながっている。北陸新幹線の効果に加え、台湾や欧州など外国人観光客の来場者も急上昇中である。政治的に目立つのも良いが、平和を謳歌(おうか)しながら後世に残る文化遺産を創造し守り続けた加賀人も見習いたい。



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