商品の追加発注ついて考えてみよう3(佐藤正臣)

2017/07/18 04:36 更新


佐藤せんせの算数で極めるMDへの道(19)

 大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。

 そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。


☆    ☆    ☆


Dさん。では追加発注の問題を問いてみましょう。


商品はレディースの7分袖のブラウス。初回入荷は200枚。20週(5月中旬)の金曜日に入荷します。入荷から3日間(金・土・日曜日)の売上数量が40枚。翌週月曜日に追加ジャッジ。リードタイムは2週。23週の月曜日に商品が入荷。販売終了日は26週まで。今回は追加1回のみです。この商品は何枚追加したらよいのでしょうか?”

ヒント①このショップの7分袖ブラウスの過去2年既存店の売上推移と指数ここでいう指数とは、過去の既存店20週の売上を1.00とすると、21週以降は20週に対してどのくらい売れているかという目安。売上の実額は気にしなくても構いません。

20 21 22 23 24 25 26
既存売上金額 650,200
734,726
786,742
838,758
721,722
656,702
604,686
指数 1.00 1.13
1.21
1.29
1.11
1.01
0.93


ヒント②このショップの過去2年の曜日別売上構成比(単位%)

7 8 9 7 12 26 31



以上です。ではDさん問題を解いてみてください。


・・・(考え中)・・・(10分後)せんせ出来ました。


はい、では説明しながら答えてください。


へい20週の3日間で売れた枚数が40枚。ということは、以下の表になります!

小数点以下は切り上げているので、実数の引き算が間違っているように見えますが、そうではありません。実際にご自分で計算する時は少数点以下も含めて計算してください。以下同様です。


20 21 22 23 24 25 26
売上予測数 40 45 48 52
44
40
37
残在庫数 160
115
67
15 -30
-70
-107


20週の売上は40枚。既存店の過去データによると、21週の売上指数は20週の1.13倍ということは、21週の売上数量予測は40×1.13で45枚。そうして他の週の売上予測数量を出すと上記の表のようになります

商品の入荷は23週の月曜日。23週はまだ在庫がありますので、24週以降の足りなくなる数量を追加すればよい。ということは、107枚追加すればよいということになります。


Dさん。惜しい~考え方は全く間違ってませんけどね。ヒント②を無視しましたね(笑)。


そういえば・・・使ってなかった。


この問題の肝は金曜日から日曜日の3日間で売れた枚数は40枚なんです。過去データの20週は1週間分のデータなんですね。ですからこのケースは、”仮にこの商品を月曜日から1週間売ったら何枚売れたか?”という数量を算出しなければならないんですよ。ということは?



そうか。ヒント②を使うと、金曜から日曜の売上構成は12%+26%+31%で69%。よって、40枚÷69%=58枚。1週間で見ると、58枚売れるという推測がされるということですね!


正解。以下20週が58枚売れたとするとこんな売上予測に変わります。21週の売上予測数は58×1.13で66枚。そうして他の週の売上予測数量を出すと下記の図になります。


20 21 22 23 24 25 26
売上予測数 58
66
70
75
64
59
54
残在庫数 142
77
6
-68 -133 -191 -245


この上記の図が売上予測数量になります。追加商品の入荷は23週の月曜日。23週の時点で在庫が切れていますから、23週から26週までの売上予測数量を足した数量。そうすると、数量は252枚。しかし、20週に実際売れている枚数は40枚ですから、18枚分(月曜日から木曜日の推定売上枚数)を引いた、234枚を追加。これが絶対ではないですが、一番ベターな数量ではないでしょうか?


なるほど。勉強になります。新規商品を追加する場合は、何曜日に入荷しているかということも大事なんですね。更に、また月曜日から木曜日の推定売上数量を引くなんて驚きました。



ありがとうございます。この方法が絶対ではないですし、前回の講義でも説明したように過去データの精度が更に上がれば、更に追加の精度も高まります。また、本来はここにカラーやサイズ・セール等のことも関わってきます。



なるほど。


ただ、皆さんに理解してほしいのですが、一見数字が出てきてややこしそうに感じますが、要は色んなツールを使って「根拠」として使用し、未来の「売り消し」をしていることと同じなんです。


前回せんせが言っていた昭和の手段「売り消し」ですね(笑)。


売り消しについてはこちら▶︎【商品の追加発注について考えてみよう2


だからこそ、難しく考えないで、このことにトライしてもらえればと思います(笑)。


へい。私も帰って自分で問題出して、頑張ります!!


Dさんにはもっと難しい問題を用意してますんで、まだまだ続きますよ(笑)。


ゲッ・・・汗。


では、皆さん次回もまたお楽しみに!!


さとう・まさふみ 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立ち上げをMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp



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