《明日につながる人作り》産地の人材育成・地域活性化

2018/09/23 06:29 更新


《明日につながる人作り》ジーンズや靴下産地の人材育成・地域活性化 行政と連携し技術者認定制度

 ファッション製品の産地が地域活性化や人材育成を強化し始めた。長年、ブランドの確立や販路開拓に取り組んできたが、ここにきて人手不足がさらに深刻なことが背景にある。行政と連携して産地の魅力を訴え、人材を呼び込もうとする動きが目立つ。

■岡山

 ジーンズソムリエの資格認定や児島ジーンズストリートなど、産地振興で実績を積んできた。主役を担ってきたのが倉敷市。昨年の「一輪の綿花」に続き、今年春には「北前船寄港地」「古代吉備の遺産」が日本遺産に認定され、全国で初めて三つの日本遺産を持つことになった。これを機に倉敷市は周辺自治体と共に、観光と産業を強く結び付けた「骨太の地域活性化策」に取り組む。

 繊維産業はその大きな柱。特に人材育成策に力が入っており、倉敷市・井原市は、従来からのジーンズ職人コースに加え、今年9月からジーンズの「創業者コース」もスタートする。さらに、倉敷市は織布・染色・縫製・加工までのサプライチェーンの各工程で、高度な技術を持つ「倉敷匠」(仮称)の認定制度の開始も決めた。

 体系的に技術習得プログラムを作ることで、物作り技術に誇りを持ってもらい、就労イメージの改善、次世代の産業の担い手育成を目指す。地元の卸・小売業は「匠」マークの商品を表示・販売でき、付加価値化や単価アップを狙える。今年度の「繊維産業担い手確保・育成調査事業」で仕組みを整備し、来年度から具体化する予定。倉敷ファッションセンターが行政や企業をつなぐ実務を担当する。

■奈良

 産地の靴下ブランド「ザ・ペア」を立ち上げ、昨年から「靴下ソムリエ」の認定を開始した。ザ・ペアは期間限定店で販売を本格化、今年3~6月は全国で3600足強を販売。ブランドとして一定の認知度が高まってきた。今後は個別企業の販売のなかで、ザ・ペアをどう位置付けていくかがポイント。A社が単独でザ・ペアを販売する時、品揃えが不足する場合には、同業のB社やC社のザ・ペアを仕入れて販売するなど、新しい枠組みの議論が進む。

 来年度以降、メーカーの技術者を対象にした技能検定「靴下マイスター制度」の創設も目指している最中。第1回で300人弱の認定者があった靴下ソムリエの役割もさらに強化していく考えで、間もなくソムリエ間の交流サイトを立ち上げる予定。総合プロデューサーを務める尾原デザインスタジオの尾原久永代表は「ソムリエに消費者ニーズを物作りに反映する役目を担ってもらい、将来は売り場のすぐ横の編み機でパーソナルオーダーに対応できるような形ができれば理想」という。

■堺

 堺市は02年から「ものづくりマイスター制度」を実施してきた。技術に対する社会的地位の向上や技能継承が目的で、地場産業の柱である刃物製造を中心に、線香、和菓子、繊維関連では注染や手描き鯉のぼりなどがマイスターに認定されている。団体、学校などが申し込めば、マイスターが働く現場で気軽に物作りを体験してもらう制度だ。毎年100件強、累計で1300件の実績がある。

 一方、市の外郭団体である堺市産業振興センターは、堺の注染職人養成を目指し、「来たれ未来の注染職人」の募集を今年から始めた。基礎研修として9月からの4カ月間で技術7回・座学4回を受講し、来年1月から3月に実技研修として3カ月学ぶロングランのコースになる。府下の私立大学などからの参加が見込まれている。

現場の物作りの魅力をアピール(「靴下ソムリエ」の産地ツアー)

(繊研新聞本紙8月17日付けから)



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