ロエベ、工芸賞の最終選考者30人の展覧会を英国で開催

2018/05/17 06:00 更新


 「ロエベ・クラフト・プライズ2018」の最終選考に残った30人の作品を集めた展覧会が、ロンドンのデザインミュージアムで6月17日まで開かれている。開催前日には審査発表会が行われ、スコットランド出身の陶芸作家、ジェニファー・リーさんが最優秀賞に選ばれた。プレゼンターを務めた女優のヘレン・ミレンさんからトロフィーを受け取り、5万 ユーロ の賞金を獲得した。特別賞は日本の桑田卓郎さんとフランスのシモーヌ・フェルパンさんが受賞した。

(ロンドン=若月美奈通信員)

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 ロエベ財団が主催する同プライズは、ロエベのクリエイティブディレクター、ジョナサン・アンダーソンの発案により、優れた工芸作家の発掘と顕彰を目的に16年に設立。今回が2回目で、18歳以上の工芸関係の仕事に従事する人であれば誰でも参加できる。

 86カ国から2000人の応募があり、30人のファイナリストには英国在住の安田猛さんを含む5人の日本人が選ばれた。

 最優秀賞のリーさんの作品は高さ31センチの淡い色の陶磁器。30年前に作った金属酸化物を混ぜて色を付けた粘土のラインが走る17年の作品だ。内側に重みを持たせて安定させた丸い底が印象的で、シンプルかつ絶妙なプロポーションを描いている。40年のキャリアがあり日本での発表経験も多い親日家で、11月には京都で個展も開催する。

最優秀賞に選ばれたジェニファー・リーさんの作品
ジェニファー・リーさん(中央)とヘレン・ミレンさん(右)、ジョナサン・アンダーソン

 桑田さんの作品は「ティーボール」(茶わん)と題した鮮やかな緑色の高さ40センチの磁器で、プラチナやスチールのダイナミックな装飾が施されている。高価な茶わんを愛(め)でる日本の伝統文化を出発点に、素材との対話によって完成した。

特別賞の桑田卓郎さんと作品

 フェルパンさんは最高齢の1941年生まれ。車用タイヤから再生したコットン製の細布をぎっしりと巻き付けて作った化石のようであり彫刻のようにも見えるオブジェは、直径1メートルの大きな円形を描いている。

特別賞のシモーヌ・フェルパンさんと作品

 アンダーソンは、「今回はオーガニックでエモーショナルな作品が目立ち、協業したい作家も多い。現代社会においてハイテクやメディアとクラフトはともに重要で、そのバランスが大切。そうした意味でもこの企画とその成果に満足している」と語る。

 3.5センチ四方の吹けば飛ぶ紙の作品から巨大なオブジェ、20代の若手からキャリア40年以上のベテランまで、作品も作者も多岐にわたる。もっとも、その大半が第1回の作品群を見て参加を希望したと語り、2回目にして同プライズのクオリティーと認知度、工芸文化における存在価値が広く認められているようだ。



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