最新 通商事情① FTA・EPAとは?

2019/11/09 06:29 更新


【知・トレンド】《入門講座》最新 通商事情① FTA・EPAとは

 TPP11が18年12月30日、日EU経済連携協定が本年2月1日にそれぞれ発効した。これらを含め、自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)という用語を新聞でもよく目にするようになった。

 FTAとは、輸入関税の撤廃やその他貿易にかかる障壁の低減を目的とする国際協定(条約)である。近年のFTAでは、企業が海外に拠点を設立する際の規制の緩和や、政府機関による公共調達への参入機会の拡大など、関税撤廃以外の要素も重視する傾向にある。日本ではこうした幅広い分野をカバーするFTAを指して、EPAという名称が用いられている。

 各国は世界貿易機関(WTO)のルールに基づき、どの国から輸入しても同じ関税率を適用するのが原則だ。FTAはその原則の中で例外的に、一定の条件下で当事国間での特別な待遇を許容するものであった。しかし、貿易自由化を迅速に進める手段として徐々に浸透し、FTAは00年代以降急増。世界全体で、309件のFTAが発効している(ジェトロ調べ、18年12月時点)

 90年代までのFTAは主として、アジア、米州、欧州などそれぞれの地域内での経済関係を強化する手段として活用されてきた。00年代に入ると、地域内に限らず、地域横断的にFTAを結ぶ傾向が徐々に強まっていった。11カ国が加盟するTPP11のように、複数国からなるFTAが増えていることも最近の特徴と言える。また協定の内容も一層高度化し、電子商取引など新しい貿易形態に対応したルールも含まれるようになってきた。

 企業にとってのFTAの意義は、やはり関税にかかるコストの削減というメリットが大きい。ジェトロの海外ビジネス調査(15年)で「FTA交渉への期待」を日本企業約3000社に尋ねたところ、「相手国の関税撤廃による輸出競争力の強化」が47%と最も高く、「日本の関税撤廃による調達コスト削減」が31%で続いた。例えば日本からEU諸国への輸出では、年間約2800億円の関税を支払っている(17年、EU統計から試算)。日EU・EPAはこのような貿易コストの段階的な削減に寄与するものと期待される。

 もっとも、FTAが発効しても、必要な手続きを取らなければ関税の減免は受けられない。具体的には、そのFTAの対象国・地域内で生産された産品であることを確認し、証明しなければならない。そのルールがFTAの原産地規則だ。最新のジェトロ海外ビジネス調査(19年3月公表)でも、輸出でFTAを利用している日本企業の61%が利用上の問題点として「原産地規則を満たすための事務的負担」を挙げた。FTA利用にはこうしたルールに留意する必要がある。本連載では日本が結ぶFTAの概要や利用上のポイントについて紹介していく。

(安田啓ジェトロブリュッセル事務所/繊研新聞本紙19年4月22日付)



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