最新トレンドを取り入れる速さやコストパフォーマンスの高さで、レディス市場の成長カテゴリーになった「韓国ファッション」。可愛さを強調するフェミニンブランドからストリート系まで豊富で、韓国でも日本でも10~20代からの関心が高い。こうした韓国ファッションを支えるのが「EC軸のビジネスモデル」。韓国のEC環境は日本より数年速いとされ、ECとSNSの駆使が成長の原動力だ。その成功モデルと、ECへの視点を追った。
(疋田優)
◇新興モール伸びる
韓国ファッションを日本市場で数多く扱う総合ECモール「Qoo10」(イーベイジャパン)は、日本国内の韓国ファッションニーズはより高まり、今後もさらに伸びると見る。Qoo10は元々韓国Gマーケットが立ち上げ、昨年米イーベイが日本事業を買収した。イーベイコリアがQoo10への韓国ブランド出店窓口で、進出を促す。
Qoo10はここ1、2年テレビCMで認知を広げ、会員数は1300万人で、年に300万人増加中。ユーザーは女性が8割で、20~30代が中心。販促イベントを連打し、単品ヒットが生まれやすい環境を作る。商品取扱高の成長率は前年比30%で、ファッションの伸びも高い。
稼働ショップ数は約3000社のうち、3~4割がファッション販売業。取扱高に占めるファッション比率も35%だ。サイト内検索ワードの1位が「韓流ファッション」で、韓国コスメより関心が高い。
イーベイジャパンのキム・ケフンKRファッション室長は、「韓国ブランドの強みは、商品提案数の多さ、韓国ファッションをイメージするモデル着用画像、そして値頃で品質のよいコストパフォーマンス。日々商品が多数更新されるので、顧客リピート率も高い。韓国セラーの多さはこれからの競争力」という。
◇オフとオンは別の客
日本で韓国ファッションがフォーカスされたのは12年ごろ。注目ブランドは入れ替わりながら、着実に浸透している。特徴は「健康的なセクシーさとミーハーさ」「先端トレンドの取り入れと生産から販売までの速さ」、加えて「ECとブランドイメージ重視のマーケティング」にたけていることだろう。
歴史の浅いブランドが多い中、ここ最近注目されている「ナンニング9」は創業約20年で、実店舗からECに舵(かじ)を切ったのが06年。多言語化にも13年に対応している。本社に物流・発送機能を持ち、コールセンターも強化し、個客への対応を重視する。直営ECもあるが、ECモールへの出店も多く、日本ではゾゾタウンでも販売している。面白いのは、「オンラインとオフラインは客が全く違う。オン・オフの融合も考えていない」(ソン・ドグクCOO=最高経営執行者)こと。月に1000SKU(在庫最小管理単位)以上の企画・生産商品をECの多販路に向ける。
他のブランドも、月に販売する型数は150~200のところが多い。生産するのはソウルの東大門や南大門。ここの卸市場は工場やOEM(相手先ブランドによる生産)企業がビル内に軒を並べ、得意とする素材や縫製技術をベースに日々、新商品を出している。これらをフル活用し、納期も韓国内工場なら1、2カ月以内。ベトナム生産も盛んになっており、こちらも納期は2、3カ月ぐらいで、トレンドを外さない売り方を可能にしている。
逆に言えば、卸販売を拡大する商売にはならず、自社がコントロールできる販路で売り切る能力が養われた。ブランドのEC販売が日本より一歩先に進んでいるといわれるのも、この理由。日本の低価格品プレーヤーも、海外ECモールの活用は見習うべき部分だろう。
(繊研新聞本紙19年12月16日付)