「死」を永遠のテーマとしている大富豪が収集するものとは? “me Collectors Room Berlin”(宮沢香奈)

2014/08/27 17:37 更新



ベルリンには多くのギャラリーが存在する。Hamburger Bahnhof Museumのような現代アート美術館や歴史的博物館から、病院や学校の跡地を改装してギャラリーにしているところ、個人運営のギャラリーまで数え切れないほど。

特に、ベルリンの中心部で、オシャレなショップやカフェが多いことでも知られるミッテにあるギャラリーはおすすめ。その中でも異質で独特なギャラリーとして話題のme Collectors Room Berlinに行って来たので紹介したい。

 

 

 

ここは、内分泌学の元教授でドイツのヘアケア製品メーカー、ウェラの元会長でもあるトーマス・オルブリヒト氏の個人コレクションを展示しているギャラリー。地上2階建の空間には、吹き抜けの広々した展示スペースに、若干高めだが個性的でハイセンスなセレクトのミュージアムショップ、オシャレなカフェが隣接している。

友人の話とHPで見る限り、とんでもないものが展示されていると覚悟をしてきたつもりだったが、実際、終始驚くことばかり。トーマス氏は「死」を永遠のテーマとし、それにまつわる収集を行っている。動物の剥製、解剖模型、頭蓋骨を用いた工芸品、ミイラ、キリストと十字架など。

昔から剥製は苦手で凝視出来なかったし、これが中世の城の中に展示されていたら不気味過ぎて、とても見れなかったけれど、なぜか、me collectorsに関してはゾクゾクする興味の方が大きく、集められたコレクションに見入ってしまった。グロさや恐怖はなく、コンテンポラリーやポップアートと同じ感覚で見れてとても興味深かったし、そのセンスに脱帽した。

 

 


   

トーマス氏とは一体どんな人物なのだろうか? 館内にいる間、そのことがずっと気になっていた。昔から大富豪のすることは理解出来ないことが多く、特に収集家に関しては全くの個人的趣味でしかない。それなのに、トーマス氏のコレクションには感覚的に共感出来るものが多かった。

実際に部屋に欲しいと思った作品が多数あった。もちろん購入など出来ないけれど、アルトバウ(第二次世界大戦前に建てられた古い建築物)のヨーロッパ風情あるアパートメントに住んでいる今、こういったアートコレクションを自宅で楽しむことも出来るわけです。

特に気に入ったのは階下フロアーの企画展で展示されていたRagnar Kjartansson という絵画家の作品。裸の男性の日常や不思議なシチュエーションを1枚1枚の絵画にして、壁一面に飾ってある。背景の色の使い方がとても美しくて、近くで見た時の絵の具の立体感もとても良かった。

捉え方は人それぞれだと思うけれど、どの”裸”だったら部屋に合うかな?じっと見つめたくなる”裸”かな?と考えながら、これは、エロスではなく、ポップだ。と実感した。

ステキなモノ、ヒト、コト と巡り合えた日はとても良い1日になる。

 



  



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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