長野・松本から衣と食を提案する「キビツミ」

2018/09/08 06:00 更新


《ローカルでいこう》キビツミ 長野・松本から衣と食を提案 農作業しながら発信

 「ローカルから土地に根差した発信をしたい」。東京のメンズブランドを退職し、地元の長野県松本市に戻って農作業をしながら衣と食を提案するのは、キビツミの小石哲也代表。自作の米をはじめ、地元の生産者の協力のもとリンゴジュースや蜂蜜、みそなどとともにカジュアルウェアを販売する。屋外での仕事の際とその後のリラックス時を想定、和をベースにした自らの企画だ。

(大竹清臣)

常識に縛られない

 小石代表はレザーウェア主力のメンズブランド「バックラッシュ」に10年以上従事した後、地元で「キビツミ」を18年春夏からスタートした。「既存のファッション業界のサイクルとは一線を画し、表層的なトレンドや既存の販売手法に左右されないシーズンレスでジェンダーレスな商品を提供したい」と話す。ファーストシーズンは鯉口シャツ(=FB用語解説=)を基にしたベースボールシャツをウール(3万4000円)、綿の布帛(2万6000円)、綿裏毛(2万8000円)で企画した。シンプルなシャツやパンツ、エプロン、グラフィカルなTシャツなども揃う。

 秋冬物ではハンテン型のコートをユーズドの米軍ポンチョライナー(3万円)や10オンスのストレッチデニム(4万5000円)、柔らかいメルトン(4万6000円)、綿ウールサテンの裏使い(4万1000円)など素材を変えて提案した。ほかに、ストレッチツイルのイージーパンツ、オールシーズン使える裏毛パーカ、ナイロンのアノラックなどもある。「生地を余らせずに服作りし、鮮度のあるうちに商品を売り切りたい」と小石代表。最初は親類の農家で学んでいたが、来年から新規就農となるため、今後は農閑期に展示会を開くなど従来の常識に縛られず新たな道を模索する。

和をモチーフにしたシーズンレスなカジュアルウェア

地元企業と協業も

 自作の米は昨年秋の収穫分は完売しており、今年秋の収穫分の予約を受け付ける。3合で600円、1キロで1200円。リンゴジュースや蜂蜜などもウェアとともに洋服屋での販売を想定する。通常の卸売り以外に、東京などで開催されるマルシェなどイベントでの販売にも力を入れている。6月からは松本市で販売代行やショップ運営をするオーナーから、セレクトショップ「ソリッド」のディレクションを任され、キビツミもショップインショップ形式で販売している。将来的にはトラックによる移動型ショップも計画している。

 地域資源を活用した商品開発にも意欲的で、蜜ろうのキャンドルや木曽ヒノキのアロマフックなども地元企業の協力を得て作った。「今後は東京での経験を生かし、地元のアーティストや事業主と協業して地元の良さを全国に発信するとともに、若手の育成、地域の活性化にも貢献したい」と強調する。

東京のメンズブランドで経験を積んだ小石代表

(繊研新聞本紙8月2日付けから)



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