繊産連がILOと共同で人権ガイドラインを策定

2022/07/29 06:26 更新


 日本繊維産業連盟(繊産連)は7月28日、人権分野において日本の繊維産業が社会的責任を果たすためのガイドライン「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」を公表した。「日本で初めて」ILO(国際労働機関)駐日事務所と組んで策定した業界ガイドラインであり、企業が人権への取り組みを進める一環として活用を促す。鎌原正直会長は、作成の背景に外国人技能実習生問題を挙げ、「認識をより深めるためには、総合的な対策が必要。大きなきっかけにして、未来につなげたい」と話した。

(橋口侑佳)

 近年は人権の尊重、環境保護など持続可能な開発に貢献する取り組みを自発的に行うことが求められ、さらにはバリューチェーン全体で実現することが不可欠とされている。これを「責任ある企業行動」(レスポンシブル・ビジネス・コンダクト=RBC)というが、日本ではRBCへの理解が進んでおらず、本格的に取り組む企業はわずか。欧米と比べ「圧倒的に遅れている」(繊産連)。

 繊産連は21年9月に「責任ある企業行動ガイドライン策定委員会」を設置。委員会と勉強会の開催に加え、UAゼンセンと労使対話を重ねてきた。

 数あるRBCの中で、ガイドラインでは労働問題に焦点を当てた。意義や必要性を整理するとともに、RBCを実現するための手法として「人権デュー・ディリジェンス」(企業が人権尊重責任を果たすために、人権に対するリスクを特定し、対処するために行う継続的なプロセス)を手続きも含め解説する。 ガイドラインは①目的と概要②受注者が最低限確認すべき事項の例示③発注者が確認すべき事項の概説④人権デュー・ディリジェンスの手続き――の4部・70㌻で構成。これまでのガイドラインはサプライチェーンを管理する発注者の立場から作成されてきたが、同ガイドラインは日本の繊維工業の特徴を踏まえ受注者としてサプライチェーンの末端に位置する中小・小規模企業の経営者に軸足を置いた内容にした。個別の課題はリスト化し、チェックすることで事態が把握できる仕様だ。別紙には参考に先進事例を掲載するなどよりイメージしやすくした。

 今後、団体会員を通じた説明会やセミナーで周知する。ただ、外国人技能実習生に関する法令違反は、繊産連の会員団体に加盟していない企業も多く、政府や繊維産地の自治体の協力を得る考えだ。英語版も作成し、海外にも日本企業の取り組みを示していく。



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