記者の問題意識④-若狭純子の場合

2016/03/30 11:38 更新


記者の問題意識シリーズ第4回目。今回は少し視点を変え、日々の紙面づくりを担当するデスクの話を紹介します。

登場するのは1面デスクの若狭純子です。国内外の糸やテキスタイルに関わる企業や産地、展示会などを精力的に取材し、素材分野における、もの作りやトレンドの報道に長く携わってきました。

(コメントは16年3月当時のものです)

 

若狭_2

 

Q.あなたは誰に向けてどんな紙面を作っていますか。

A.この業界で働く人にとってヒントになる、前向きな記事が満載の紙面を作ろうと思っています。

誰に向けて、となると月並みですが、ファッションに関わる方、または他の業界にいるが、ファッションの業界に興味を抱いている方、すべて、ということになります。そうした方たちに、前向きで、元気になれるような記事をお届けしよう、そう思っています。

業界紙ですので、もちろん「今のファッション業界の動きがわかる」ことは大事ですし、まず客観的な事実を伝える記事が必要と思っています。しかし、ネガティブな記事よりも、読者にとって、新しい発見やご自身のご商売での工夫のきっかけにつながるニュースが目立つようにと考えています。

 

繊研新聞2016年3月11日1面
繊研新聞2016年3月11日付1面

 


Q.デスクとして、一番の課題はなんですか。

A.わかりやすく、面白く、業界の皆さんに共感していただける紙面を作ることです。

少し抽象的な表現かも知れませんが、とっつきやすく、わかりやすく、なおかつ読み応えのある紙面を日々、追求することが課題です。誰にとっても、面白い、というのは難しいかも知れません。しかし、ファッションの世界で働く者同士であればわかることってあるはずです。

共感はもちろん、普段は考えたりしないけれど、一歩踏み込めば想像できること、この世界で働くなら、あらためて考えてみたいこと、それらを業界で働く皆様に日々の紙面で届けることが、繊研新聞の仕事の一つと考えています。

繊研新聞には、いわゆる一般紙の社会面はありません。どのページに向けた記事もビジネスに携わる方々の進化する営みを追いかけ、取材して書いています。

ただ、そうした取材のプロセスの中に、時としてこの業界で働く人になら共感を持ってお読みいただける、ある種のドラマが浮かび上がることもあります。

読者にとってヒントになる有益な情報をお伝えすることは繊研新聞の第一の役割ですが、記者が足で稼いで探し出したニュースを、私たちデスクはさらに磨いていろんな形で紙面に載せていこうと努めています。

Q.紙面作成で心がけていることはなんですか。

A.その日の一番の記事、知っておいて欲しい記事を、バランスよく載せることです。

私がデスクを担当している1面は、新聞にとっての「顔」です。

その日のトップニュースを掲載するのですが、紙面には限りがあります。特定の分野、たとえばレディスブランドの話ばかりが載った紙面だと、メンズブランドに携わっておられる方にとっては、「今日は自分に関係のない日」になるかもしれません。

だから、商品であれば、ウエアもグッズも素材まで、経営の動きなら大企業から中小企業まで、業種では、メーカーも小売りも卸もバランスよく、ニュースを盛り込めるよう、そう心がけて紙面を作っています。

 

20160302日付 19424 号 1 面_記事
2016年3月2日付 1 面

 

Q.繊研新聞のオススメの読み方は

A.時間がないときは、1面をまずチェックして欲しい。

忙しい皆さんにお薦めしたいのは、繊研新聞の1面の活用です。先ほど触れたように、その日、一番のオススメの記事を載せていますので、それを流し読みしていただくだけでも、その日のニュースがおわかりいただけるはずです。

2面以降のページの内容についても、1面に「きょうの紙面」という目次欄があり、そこにわかりやすく当日の紙面内容や企画について載せるようにしていますので、そこで気になる記事を見つけたり、その日の紙面に載っているニュースのポイントをつかんだりしていただければ、と思います。  

Q.ネットで発信される情報と新聞の違いってありますか。

A.紙だからこそできる、ニュースの伝え方はあります。

情報を伝える、という意味では、何も違いはないと思います。ただ、紙面では、記事の大小のほか、見出しや写真の扱い方で、伝え方に工夫の余地が大きいと考えています。新聞紙のサイズといえば誰もが思い浮かぶでしょうが、その大きさは一定です。

限られた紙面であるからこそ、活字や罫線のバリエーションを活用し、ニュースをレイアウトし(新聞には「整理」と言って、その仕事のプロフェッショナルがいます)、その日に載っている記事の強弱や濃淡が一目でわかるという側面が紙の新聞にはあります。

時間がない方には、実は新聞紙を読むほうが情報の整理がしやすく、簡単で便利かもかも知れません。新聞ならではの培われた「様式美」が存在するからです。個人的には、その様式美をさらに追求することで、表現手法がもっと自由で、より面白い紙面が作れるのではないかと考えています。

ネットの方が、より早く、一気に情報を流せること、しかも極端に言えば限りなく情報を流せるという利点については、全く異論がありません。しかし、様々な情報が氾濫(はんらん)する時代の中で、私たちが本当に伝えたいものは何なのか?単に情報量の多さだけでは、そうした意図までは伝わらないと思っています。

せっかくのニュースが、情報の氾濫の中に埋もれて、記号に近づいていくようなことは避けたいですし、もっと言えば、情報よりも知識、さらに進んで共有できる言語や思いのようなものを目指したい。

繊研新聞はもちろん、デジタル版も販売していますし、webサイトを通じたニュース発信も行っているのですが、今お話したような感覚をネット、紙の双方で忘れずに、「なんか、元気が出たなぁ」と思われるような媒体になりたいですね。

 




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