「日仏交流160周年」「フランスではシネマはアート」といったキーワードが印象に残っている6月最初の「CINEMATIC JOURNEY」。
6月後半はその進化形として、「日仏アート交流にも注目!」をテーマに開幕✈
思えば昨年のフランス映画祭で上映された作品の一つ、トラン・アン・ユン監督の『エタニティ 永遠の花たちへ』は、監督の来日のみならず、1780年創業のフランスのジュエラー、ショーメのプライベートコレクションとアーカイブが提供されたこともあり、当コラムでも紹介した。
時を同じくして1年後の今年、偶然出会ったのがショーメ銀座 ポップアップストア(画像上)で開催中の「Chanumet encounters-三人のアーティストとの出会いー」で目にしたデッサンコレクションの展示。
ジュエリー史上重要な資料とも称される80,000点にも上るショーメのデッサンコレクションの中から、メゾンが大切にしてきた自然主義を表現した作品と、日本の植物画の作家、神坂雪佳の画集『百々世草』を照らし合わせての展示はとても興味深い。
また今月末、6月28日より東京、丸の内にある三菱一号館美術館で開催の
当展ではショーメと日本との出会いとなる、貴重な出会いの数々が待ち受けているという。
とりわけ王妃、マリー=アントワネットのオブジェコレクションの日本の漆塗りの文箱は期待度大。どうぞお見逃しなく!
「日仏アート交流にも注目!」がテーマの今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
次なるアート交流は現在公開中のシネマ『フジコ・ヘミングの時間』。
世界を駆け巡るピアニスト。その栄光のはじまりは60代からという☆☆☆
そんな彼女の人生の一コマ一コマを、貴重な未公開映像などを織り交ぜて丁寧に紡ぎ出す、初のドキュメンタリー映画は、観る者の世代により異なる夢や勇気を届けてくれるだろう。
そして言葉の垣根を超えて目や耳にする者たちの琴線に触れ魅了する、彼女ならではの情熱にあふれる奏法は、ソウルフルサウンドと称したい。
そんな感動の一幕となるパリのオラトワール・デュ・ルーヴル教会(画像上)や、昨年末行われた東京オペラシティ・コンサートホールでのソロ・チャリティコンサート(画像下)まで、世界各地の演奏会の模様も収められ、少しばかり旅気分に浸れる。
「パリは骨董品がとても安いから、ついつい集めてしまう」というフジコさんお気に入りのアンティークの品々と、ドイツ語で会話を交わすことが多いという猫たちと暮らすパリの古いアパルトマン(画像下)、25匹の猫(作品資料作成時の情報)が同居する下北沢にある家族の歴史を重ねた家、古民家をリフォームした京都の自宅…
‟好みは人それぞれだけど、古いものには使った人の精神が感じられます”(本作資料より)
と語る彼女ならではのライフスタイルが、実に興味深い。
その生き方を体現しているともいえる、ご自身のファッションへのこだわりについて、本作映画関係者にリサーチしたところ、下記のような返答を得た。
- オリジナルであること。
- 自分らしさがあること。
- 既製品は嫌、同じだから。
- 必ずご自身で、あるいは知り合いのプロに依頼して、どこかに手をいれて、「自分の服」にすること。
「細胞年齢の若さが外見に現れる」と耳にしたことがあるが、フジコさんはまさにそんな女性に違いない!
シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
©2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ
「日仏アート交流にも注目!」をテーマに巡っている今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
締めくくりは、二人の名監督、ロマン・ポランスキー×オリヴィエ・アサイヤスによる最強のコラボ作ともいうべき『告白小説、その結末』。
フランスで最も権威ある文学賞の1つ「ルノドー賞」をはじめ、高校生の選ぶコンクール賞を受賞し、日本語ほか、数か国語に翻訳されている原作『デルフィーヌの友情』を筆頭に、国内外を問わず注目を集めるフランス女性作家、デルフィーヌ・ド・ヴィガン。本作以前にも「仏本屋大賞」を受賞した『ノーと私』(2008)が20カ国語に翻訳され、映画化されたという。
その彼女が2年前に来日した際、同世代で活躍する日本人女性作家の角田光代との対談がアンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュで実現した。(あいにく私は未参加ではあるが…)
なおデルフィーヌ同様、彼女の作品はフランスで翻訳出版されているとのことだ。
というわけで、観る者の感覚を刺激する本作の主人公もまた女性二人。
女優作家とエル(Elle=彼女と名乗るゴーストライター?マネージャー??親友???)を演じるのは、監督の妻で創作上のミューズことエマニュエル・セニエ(画像上左)と、ハリウッドでも活躍するエヴァ・グリーン(画像上右&画像下)。
2人の想像を超えて交わされるバトルは、「赤」をキーカラーに、ルージュやネール、ストールなどの小物使いで、さりげなく心理描写されているよう。
その役割を担ったのがポランスキー組(と勝手に命名)の一人、ディディエ・ラヴェーニュ。『エディット・ピアフ~愛の讃歌』でアカデミー賞メイクアップ賞を獲得した人物だ。
随所に輝きを放つポランスキー×アサイヤスの共同脚本。きっとその可能性は∞なのだろう。
6月23日よりヒューマントラストシネマ有楽町・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中