「日英文化のマリアージュ」(宇佐美浩子)

2022/07/18 06:27 更新


流行の震源地として知られるロンドン、イースト・エンド。そこはまたレストラン激戦区でもあるとか。

中でもクリエイターやデザイナーなどが集まると聞くダルストン地区。この地に実在するレストラン「ジョーンズ&サンズ」で撮影が敢行!さらに編集もCGも一切無しの全編ワンショット!!

気になるそのタイトルは?

『ボイリング・ポイント/沸騰』。ネーミングからしてハラハラドキドキ感満載の1作と共に、「CINEMATIC JOURNEY」2022夏旅編こと、「日英文化のマリアージュ」へ出発。

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何しろ本作監督フィリップ・バランティーニは「シェフとして12年のキャリア」を有しているのだから、プロであろうと、アマチュアであろうと、リアル度満載に変わりはないはず。

そんな背景もありつつ、副料理長役の女優ヴィネット・ロビンソン(下画像左)は、ミシュラン2つ星を誇るガストロパブの最高峰「ハーウッド・ア―ムス」の女性シェフ、サリー・アビーの仕事を手伝いながら見学。そして、次のようなコメントを;

「『シェフとして最も苦労したことは何ですか?』という質問をサリーさんにしたのです。が、その返答に涙がこぼれそうになりました」

さて、その理由とは?

「『女性がシェフとして活躍することは、並大抵のことではありません。でも最近のシェフたちは、環境を変えようとしています。その結果、昔のような息苦しさが消えつつあります…』」

と、回答くださったとのこと。


その一方で、レストラン業界の食のトレンドも、しばしば様変わりするのは何処も同じだ。

たとえば本作にも登場するメニューの一つ「鴨肉の醤油ソース」といったように「和食」風アレンジは、2013年12月のユネスコ無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」の影響もあってか、かなり定着感があるように思う。加えて、年々注目を集める日本酒ブームも同様に。

スクリーンを見つめつつも、脳内はいつしか観賞後のメニュー選びになっているかも?


ボイリング・ポイント/沸騰

ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開中
© MMXX Ascendant Films Limited


2022夏旅編こと「日英文化のマリアージュ」をテーマに巡る今回の「CINEMATIC JOURNEY」。続いての目的地は、2024年の北陸新幹線開通予定に向けて進化を続ける恐竜王国!?ではなく、日本とイギリスの文化的マリアージュをも体感する最新&最旬酒蔵観光施設「ESHIKOTO」@福井へ。


前述の映画の舞台となるロンドンはもとより、国内外にファンを持つ福井発日本酒のブランド「黒龍」や「九頭龍」などで知られる「黒龍酒造」をはじめ、日本酒業界の老舗蔵元として2024年に創業220年を迎える「石田屋二左衛門」。

そのアニバーサリーイヤーに先駆け、新たな歩みとなるプロジェクト「ESHIKOTO」が、約10年の構想期間を経て、遂にスタートした。

なぜまた「この施設を訪ねてみたく思ったのか?」というと、その名に込められた思い。

  • 「えし」とは、古い言葉で「良い」。よって「えしこと」=「良いこと」
  • 「えしこと」を逆さ読みすると「とこしえ」(草間彌生作品名としても親しみが…)=「永久」

そして、女優・陶芸家として多岐に活躍する結城美栄子さん作、火の精や水の精などのオリジナル作品が展示されている酒の貯蔵セラーやイベントスペースがある空間「臥龍棟(がりゅうとう)」(上記画像)。そこは今回のテーマでもあり、かつまた結城さんが学んだロイヤル・バレエ学校の地、ロンドンと縁があるから。

なぜなら、日本でも鹿鳴館をはじめ、数多くの名作を残したロンドン出身の建築家ジョサイア・コンドルの子孫で、同じく建築家のサイモン・コンドルにより完成した空間だから。

館内に設えた瓶内2次発酵のスパークリング⽇本酒「ESHIKOTO AWA」を約 8,000 本眠らせている貯蔵セラー「臥⿓房」から旅立つ美酒は、畑山浩杜氏の情熱がきめ細やかな泡立ちと共に、グローバルな味わいと時間のマリアージュを届けてくれる。

ちなみに、当ブランド名の一つでもある「九頭竜川」(旧名:黒龍)を目の前に、お酒や⾷を楽しむ「酒樂棟(しゅらくとう)」(下記画像)にても結城さんの作品との出会い有。

お酒を核に福井を中心とした北陸の文化を伝える場所として、当敷地内に蒸留所や醸造ラボ、オーベルジュなども続々とオープンする予定だ。


2022夏旅編「日英文化のマリアージュ」をテーマに巡った今回の「CINEMATIC JOURNEY」。ゴールに待ち受けていたのは、音楽界の大御所たち。彼らのアニバーサリーイヤーを祝して!


今月12日に結成60周年、日本的感覚でいうと還暦を迎えたザ・ローリング・ストーンズ。そんな記念すべきアニバーサリーイヤーに公開となるのが、『ロックン・ロール・サーカス 4K レストア版』

「1968 年に撮影されながら、諸事情で96年までの28年間封印されたままだった伝説的作品」の上、日本初劇場公開。さらに「96年版から画質音質が向上した2019 年制作の4Kレストア版」での上映というのだから、一層気になるファンも多いはず。

また何といっても、ロック好きにはたまらないレジェンドたちが勢ぞろい。ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ザ・フー、マリアンヌ・フェイスフル、そしてオノ・ヨーコほか、 「ロックン・ロールとサーカスの融合」を目指してストーンズが企画・製作のみならず、ホスト役も務めたライブイベントだったそう。

そして今回のテーマである「日英文化のマリアージュ」となるキーワード「ジョンとヨーコ」のちょっとしたエピソードを、本作資料にて発見!

❝カメラに映らないところで彼女(=ヨーコ)はジョンの手を握る。❞

余談だが当日のジョンのコーデは、リーバイスのデニム上下のセットアップだったとか。

同じく、本作資料からヨーコのコメントを下記に一部引用させていただくと;

「ロックン・ロール・サーカスにあった同志的な仲間意識は次の世代に大きな影響を及ぼしたと思う。今彼らは普通に一緒に大きなコンサートやチャリティをやっているけれど、それまではなかった。それが起こったとても美しい時代、それがスウィンギング・ロンドン。」

スクリーンを通じ、そんな時代の空気感を疑似体験できるのが、本作の魅力だと思う筆者だった。


参考までに、本作の応援として明記されている「JOURNAL STANDARD / OPAQUE.CLIP」が、各々オリジナルTシャツなどのグッズを店頭にて発売。こちらもお見逃しなく。

なお画像下のジョン・レノン同様、はるかなる空の向こうへと旅立った(昨年8月24日)名ドラマー、チャーリー・ワッツを追悼し、ストーンズ自ら企画した、彼らが記録されたファーストフィルム『チャーリー・イズ・マイ・ダーリン 2K レストア版』が劇場同時期公開に!

ちなみにこちらも、日本初正式劇場公開となる「90,000 を超えるフレーム(半分以上はそれまで未発表&編集の映像)を手作業で修正&再編集した2012年2Kレストア版」とのこと。


『ロックン・ロール・サーカス 4K レストア版』

8月5日よりBunkamura ル・シネマ他にて全国順次公開
配給:オンリー・ハーツ
©2019 ABKCO Films


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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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