弥生3月、咲き誇る女性の才(宇佐美浩子)

2022/03/25 06:00 更新


アクリル絵画の連作『わが永遠の魂』(2009年∼)と『生命(REPETITIVE VISION)』(1998年)

今月8日のIWDInternational Women's Day)こと国際女性デーを筆頭に、日本では3日の「桃の節句」、そして街中では桜のみならず開花シーズンを迎える。心なしか「3月は女性月間」と称したく。

ちなみに旧暦では、草木がだんだんと芽吹く時期をさす「弥生」の月にあたることもあり、以前、当コラムでも紹介した、日本が誇る前衛芸術家のドキュメンタリー映画『草間彌生∞INFINITY』を思い出した。

そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」が最初に向かうのは、3月22日生まれの先生の誕生日を祝して、8月28日まで東京・新宿区にある草間彌生美術館で開催中の展覧会「心の中の詩」で目にした、まさにポエムな作品タイトルなどと共に開幕。

小説家としても活躍する先生ゆえ、その文才とアート作品の絶妙なマッチング的出会いも本展の楽しみの一つかもしれない。なおチケットは日時指定・事前予約制のウェブサイトのみで購入可能(美術館窓口での取り扱いはなし)。

というわけで3月後半の「CINEMATIC JOURNEY」は、「弥生3月、咲き誇る女性の才」をテーマに、様々な世代の女性たちの才能をスクリーンでご一緒に!

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オープニングは、かつてドリーミーなコラボレーション「LOUIS VUITTON × YAYOI KUSAMA Collection」を発表し、話題を呼んだメゾン「ルイ・ヴィトン」。

昨今、世界各地で開催される映画祭で、俳優たちを華やかに彩るコレクションの数々は、当コラムでも時折紹介しているが、先月2月25日(現地時間)、フランス・パリで開催された 第47回セザール賞授賞式に登場した新星と大女優、下記二人のコスチュームは、それぞれの個性を粋に演出していたように思う。

●アガト・ルセル

4月1日より日本公開となる第74回カンヌ国際映画祭にて「最高賞」パルムドールを受賞した『TITANE/チタン』のヒロイン役アガト・ルセル。

スパンコールの刺繍を施したカスタムガウンと、ハイジュエリーコレクションから、ホワイトゴールドにダイヤモンドをあしらったイヤリングとリングをコーディネート。

©LOUIS VUITTON

●ケイト・ブランシェット

栄えある名誉賞を受賞したケイトは、2022年春夏コレクションより刺繍とスパンコールが施されたブレザー、レーストップスとブラックのパンツに、ハイジュエリーコレクションから、ホワイトゴールドにダイヤモンドをあしらったイヤリング、ブレスレット、リングをコーディネート。

©LOUIS VUITTON

ここで、大女優ケイトがスタイリッシュなファッションで主演を務める『ナイトメア・アリー』の話題を少しばかり。

世界が認める名監督ギレルモ・デル・トロならではの魅惑的映像と、心に染み入る2時間半ほどのストーリー。そこには台詞無くしてモノを語るかのような、登場人物が身にまとう242種余りの衣装を用意したという担当のルイス・セケイラの情熱がほとばしる。

その一部を、本作資料から一部紹介したく!

時代背景のリサーチ、数百に及ぶイメージのリスト化、そして世界中から集めた布地などを用いて、ルイス自らお手製に挑んだ結果、靴、手袋、帽子、下着を含め衣装の8割がハンドメイドになったそう。

男性ファッションにとって素晴らしい時代であった1941年。

(イタリア、スペイン、英国から手に入れることができた)布地が衣装になっていくのを見て、とてもワクワクしたね

と、ルイス。

ケイト演じる博士のラグジュアリーなパンツスーツとドレスの色調は、緑、赤紫、黒。そしてスタイルの参考は、グレタ・ガルボとジョーン・クロフォード。彼は、「ケイトを時代にとらわれない美しさにしたかった」とのことだ。

一方の彼女も、「ルイスの仕事が演技に刺激を与え、多くのアイデアが浮かんだ」と感謝。

と、濃厚な隠し味が効いた本作。この続きはスクリーンで!

ナイトメア・アリー

3月25日(金)より全国公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.


「弥生3月、咲き誇る女性の才」をテーマに巡った3月後半の「CINEMATIC JOURNEY」。フィナーレを飾る女性もまた、才能あふれる一人。

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』。

彼女の名はマリオン・ドハティ。数々の名監督、名優との仕事を重ね、多くの名作を世に残した人物である。

映画監督の仕事の9割は、キャスティングの質で決まってしまう

というマーティン・スコセッシ監督のコメントに集約された、映画業界における重要な職務。

その存在意義を、ウディ・アレン、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォードほか多数の貴重な証言と共に再認識する、貴重な機会となるだろう。

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

4月2日(土)よりシアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開
©︎Casting By 2012

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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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