伊的スロー文化と映画(宇佐美浩子)

2022/01/31 06:00 更新


「もしやこの画像は、前回のあの映画の…」

そしてまた下記画像へと続くこの2枚は、まさにあの映画『ハウス・オブ・グッチ』の衣装にまつわる1コマなんです。

ちなみに、この貴重な画像を目にする機会を得たのは、レザー&ファーウェアを中心に年2回開催の国際見本市『THE ONE MILANO - ザ・ワン・ミラノ』主催者による、オンラインセミナーでのこと。

テーマは「メイド・イン・イタリーのスローファッション」。

時代のキーワードである、サスティナビリティに基づいたイタリアのファッション業界における現状に焦点を当てた内容が、筆者の親世代から受け継がれたライフスタイルと重なり、共感することしばしば!

例えば;

☑高品質な天然素材の持続可能性

☑ヴィンテージという愛着感

☑新旧の技の融合が成せるアップサイクリング

中でも「Fureco」社CEO、Cesare Gavazzi氏がナビゲート下さった、冒頭の記述にもある前回紹介した話題作の舞台裏へと潜入するかのようなストーリーと画像で進行し、ワクワク感がヒットアップするばかり。

上質な素材と一流の職人だからこそ成せる精巧なリメイク術で創作された、ガガさま着用のファーコートは、「マスターピース・ビンテージ」そのもの。そこで読者の皆様と共に、そのトキメキの一部をここに!


というわけで、2022年1月後半の「CINEMATIC JOURNEY」は、「伊(イタリア)的スロー文化と映画」をテーマに巡ります。

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というわけで次なる目的地は、イタリアンテキスタイル発祥の地として知られるビエラへ。


前述のオンラインセミナーとほぼ時を同じくして届いた、一通の悲しいお知らせ。

それは、「生涯をファッションとイタリアの伝統に捧げた Nino Cerruti氏が、1月15日に逝去」のメール。

ジャーナリストへの夢を抱きつつも、家業を継ぐこととなり、哲学とジャーナリズムの研究を諦めたのは20歳にも満たなかったと知り、ジャーナリストの端くれとして「スロー」ながらも、地道に歩み続ける筆者としては申し訳ない気持ちが…

ともあれ、そんな氏の決断がファッションを通じ、実現した文化的偉業の数々は、スポーツやF1   など多ジャンルにわたる。その一つが下記画像からも伺い知れる通り「Nino & il Cinema」。

女優のキャスリーン・ターナーと

衣装デザインを通じて紡がれた映画界でのキャリアも概ね半世紀近い歴史を誇り、それはジャン=ポール・ベルモンドとアラン・ドロンの主演作『ボルサリーノ』ほか、数多くのヨーロッパ映画への貢献に始まります。

その後、キャスリーン・ターナーとマイケル・ダグラス主演による『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』を皮切りに、ハリウッドとの絆も深まり、作品のクレジットに登場するだけでも100以上あるとのこと。

「チェルッティ・エレガンス」と称される作品を数多く体現してきたマイケル・ダグラス(同上ほか)、ジャック・ニコルソン(『恋愛小説家』ほか)、マルチェロ・マストロヤンニ(『プレタポルテ』)、シャロン・ストーン(『ガラスの塔』)などなど名優の名がずらりと並びます。

中でも『アメリカン・サイコ』にて、クリスチャン・ベール演じる主人公がクリーニング店の店員に向かって放つ台詞(下記);

“You can’t bleach a Cerruti. Out of the question.”

各自各様に、そのシーンを想像してみたくなるのでは?

それでは最後に恥ずかしながら...

この期に及んで知ることとなった「ジョルジオ・アルマーニもイタリアのファッション界期待の新人であった1960年代半ば、Nino氏の下で歩まれた」という歴史の1コマ。

そうした数えきれないほどの人々と、そして日本を含むさまざまな世界と共に歩まれた91年の思い出を携え、天空へと旅立ったマエストロNino氏。

❝ Riposa in pace!❞

それではいよいよ1月の「CINEMATIC JOURNEY」を締めくくるゴールへとご一緒に!

そこは名だたるミュージシャンの聖地にして、作品タイトルでもある『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』。


画像(上記)を見る限り「そこは田園地帯の農場?」としか思えないかもしれないのですが、驚くなかれ、あのクイーンの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』誕生の地なのです。

この世界初、宿泊可能な滞在型音楽スタジオにて、ブライアンとロジャーが外で遊んでいる最中、スタジオ内で一人黙々とピアノに向かい、楽曲創作に専念していたのがフレディだったという秘話もスクリーンに登場。

他にもオアシス、イギー・ポップ、ロバート・プラント、シンプル・マインズなどなど、「耳にしたことのある」著名なミュージシャンたちが装うことなく過ごし、音楽と向かい合うことを可能にするここは、今なお農場としても経営を続けている点が、今回のテーマ「伊(イタリア)的スロー文化と映画」に通じると筆者は思っている。

あらゆる分野において、昨今の世界的状況の中、IT系の進化とその必要性を実感する中、

自然と共に生きることが人間本来の生き方で、ミュージシャンにとってもいい影響を与えたはず (本作資料より)

と語る創設者兼現オーナー夫妻からバトンを受け継ぐ娘リサ。

そしてまた

パソコンで音源を送りあう音楽制作は味気ない (本作資料より)

と嘆くオアシスのリアム・ギャラガー。

どの言葉にも「共感」の一言に尽きる。


ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ

1月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

© 2020 Ie Ie Rockfield Productions Ltd.

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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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