ここ数年、輝きを増しているキーワードがある。
それはアート。
おそらく、そう感じるのは私に限ったことではないはず。
それを裏付けるかのように、シネマの世界でもアートがテーマになった作品数は年々増加し、またファッション業界でも、デザイナーが好んで用いるキーワードの一つと言えそうな。
そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」はまさにドンピシャの1作『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』をクローズアップ。フィンランドの俊英、クラウス・ハロ監督のアートにまつわる貴重なコメントから、時代との相関関係をシェアしてみたく!
それでは早速、
アートとは…
❝映画を作るときに、いつも参考にするものです。現代を舞台にしたストーリーを作るときでさえ、参考にしています。すべてのアーティストから、学びを得ることができるのですから❞
絵画とは…
❝紅茶のようなものだと思います。時間をかけて知るものであり、急いでも得るものはない❞
この問答には、「?」事項に対して、即ネット検索できる現代社会への一種の警鐘ともいうべき、監督の想いが潜んでいるかのよう。
そして本作の真髄ともなるのが下記;
❝私は歳上の方たちを尊敬しています。なぜかといえば、これまで長い時間をかけてひとつのことを学んできています❞
上記画像の主人公、美術商の祖父と、その孫に投影され、そして下記へと続く…
❝過去を振り返ることも大事だし、古い考え方を知ることも大事です。だからこそ年齢を重ねた人々から学ぶことは山程あるのです❞
すなわち世界的に高齢化が進む中、老齢者への敬意、また彼らの知識や経験をも失われがちな現代社会における監督からの提案。と同時に観る者それぞれの立場で、想いを新たにするきっかけになるのではないかなぁと…
2月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか公開
© Mamocita 2018
「アートは時代のキーワード!」をテーマにした今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
前述のシネマ同様、どこかミステリー的要素も含む、太宰治の未完の遺作を、劇作家、演出家など様々な顔を持つケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点で完成させた話題の舞台『グッドバイ』。今度は映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』になって、公開中だ。
主演の大泉洋、小池栄子をはじめ出演者がまとう昭和モダンな手作り衣装もまた、アーティスト魂満載の衣装デザイナー渾身の力作!
「キャラクターの七変化を表せて、とても楽しかったです」(作品資料より)
とのこと。
全国公開中
配給:キノフィルムズ
©2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ
同じく作家の死後、いま再び長い眠りから目覚め、制作時とは異なる時代の人々に新たな感動を呼んでいるイタリアの抽象彫刻家、カルロ・セルジョ・シニョーリ。彼の彫刻&写真展「Le Paradis Terrestreー地上の楽園」について、少しばかりご紹介したく思う。
なぜならそこには、とてもロマンチックな要素が混在しているから。
死後30年の間、倉庫に眠っていた彫刻作品全115点を日本人写真家、中村治が撮影し、内30点と彫刻5点が3月1日まで、東京・九段にあるイタリア文化会館で展示されている。
折しも、前回の東京オリンピックの前年に初来日し、制作過程を撮影した日本人女性写真家と結婚し、彼女をイメージした作品「Bambù竹」の写真(下記画像中央)と共に、新たな東京オリンピック開催年に日本の地を踏んだのだから。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中