日本では人口の約10%の割合でいると言われている左利き。ランチ(岐阜県各務原市、加藤信吾社長)はその10%にターゲットを絞ったショップ「左ききの道具店」を営む。18年の立ち上げ以来、順調に固定客が付き、売り上げは右肩上がりで伸びている。
(森田雄也)
しかられた幼少期
左ききの道具店が立ち上がったのは18年。夫でもある加藤信吾社長が企業ブランディングなどを行うランチの新事業としてスタートした。その立ち上げを担ったのが礼さんだった。
礼さんは昔から左利き。当時は今よりも左利きを右利きに矯正することが多い時代だった。礼さんも箸は右手に矯正されたものの、鉛筆やペンなどで左で書く癖は抜けなかった。内緒で左で書いていたところ、親に見つかり怒られた過去の経験から「左利きの人の役に立ちたい」という思いが芽生えた。
ただ、「仕入れの当てもなく、一度は夫に却下された」。それでも友人などからの応援や励ましもあり、やりたいと再度交渉。晴れて8月13日「左利きの日」にオンラインショップからスタートした。
実店舗を設けたのは23年夏。百貨店や蔦屋書店などで期間限定店を開く中で、消費者の生の声を聞く場があれば自分たちにとってもプラスになるだろうと考えたのがきっかけだ。
事務所の一角の空いていたスペースをリフォームし、ショップ「左ききの道具店~ときどきストア」をオープンした。店舗は月に4、5回ほど開くスタイル。商品をじかに見たい人が来店するほか、基本的にはエンドユーザーとコミュニケーションを取る場に位置付ける。
左利き対応の手帳
同店の一番の売れ筋はオリジナルブランド「HIDARI」から販売している「左ききの手帳」。19年に応援購入サービスの「マクアケ」で〝左ききさんにフィットした手帳を作ろう〟とサポーターを募り、応援購入総額107万円を集めて、20年版から立ち上げた。以降、毎年アンケートを取って、改良を重ねて販売を伸ばし続けている同社の看板アイテムだ。
文字を書いている左手に隠れないよう、全てのカレンダー(年間・月間・週間)で、日付の数字を右上にレイアウトしている。また、一般的に「週間レフトタイプ」と呼ばれるレイアウトをひっくり返して、右ページにスケジュールを、左ページにメモを配置することで、予定を確認しながらメモを記入することが出来る。ページを開く方向も一般的な手帳と逆になっていて、左手の親指で目的のページを巻頭からパラパラとめくって探すことができる。
カバーはPVC(ポリ塩化ビニル)で、ネイビー、グレイッシュベージュ、コーラル、イエロー、バイオレットの5色展開。税込み3300円。
日本では左利き用の手帳は珍しく、「一度使うと、『これ以外使えない』とリピーターになってくれる人が多い。毎年、販売数が伸び続けている」という。
ほかにもキッチンバサミや包丁、カレースプーン、子供用キッチンセット、薄型名刺入れ、鉛筆削り、財布など、揃える商材のほとんどが左利き用だ。「左ききのシャツ」(1万2000円)は、着る人も作る人も豊かになる社会を目指すアパレルEC販売の10YCとの協業品だ。胸ポケットを右胸に配し、英語で左利きを意味する「Left-handed」と小さく刺繍している。