■スタート時の予算をどう配分するのが適切か?
今回は、ECをスタートするのはいいけどどれくらいの金額がかかるのか?というところに焦点を合わせていきたいと思います。
*ふかじ先生の過去ブログはこちら
予算感がわからない!
webって業者によって費用感がぴんきりですから、どのくらいの作業でどのくらいの金額かが非常にわかりにくい。webのお仕事をメインでしている僕でも、
業者による
としか言えません(いきなりタイトルを覆してすみません_…)。実績や製作物のクオリティを見て、「このクオリティにしては高い(or 安い)」という判断は可能です。またお使いになるCMSやASPカートによっても値段が変動する為、ここも専門的な知識が無いと判断しづらいところでしょう。ですから判断基準を、
- 自社のブランドはどの段階なのか?
- 投下できる予算はどのくらいなのか?
上記2点に絞る事をお勧めします。
でないと業者のいいなりになって払わなくていい金額を支払ってしまったり、ちゃんと費用をかけないといけないところで変にケチッて機会損失してしまったりなんて事も起こってきます。
それくらいwebの世界は金額が曖昧で、webサイトを「10万円で作ります!」という業者もいれば集客プラン含めて「1500万円かかります。」という業者もいたり…。それらがクオリティと比例しないのが一番怖いのです。概算にはなりますが一般的にちゃんとしたブランドサイト(ECサイト含む)を作ろうと思うと200~300万円くらいはかかってきます。
※CMS(コンテンツマネージメントシステム) →Webサイト制作に必要な専門知識がいらず、テキストや画像などの情報を入力するだけでサイト構築を自動的に行うことが出来るシステム。CMSを導入することで、初心者でもWebサイトを運用することが可能になります
※ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)カート →ECに必須の「ショッピングカート」の機能を提供するシステムのこと。webサイト作成機能も付随していることが多く、1つシステムを契約するだけでECそのものの構築ができます
自社のブランドはどの段階なのか?
まず考えなければならないのはここです。第1回、第2回でも触れた内容ですが、スタートしたばかりのブランドであればそもそも需要がありません。そんなところに数百万円投資したところで、回収の見込みはいつになるのか?という問題が発生します。それでもECを始めたい!という企業さんには、BASEやstores.jpなどの無料のサービスをお勧め致します。
今や無料サービスでも内容が非常に充実していますから、スタートアップブランドとしては問題無くお使い頂けるのではないでしょうか。商品撮影や決済まわりの事まで網羅しており、無料サービスとは思えないほどの内容です。
ただ、問題は集客です。ここはどうしても手間暇、もしくは資金をかけなければどうしようもありません。集客の為のブランドサイトくらいはミニマムで結構なので構築しておく必要はあるでしょう。ここを起点にブランディングと集客をしていきます(詳しい集客プランはまた次回以降にお話します)。
投下できる予算はどのくらいなのか?
予算に関しては大手でも限られている場合があります。ここもブランドの成長フェーズによりますが、既に知名度があり実店舗でも売上が取れているブランドは投下できる予算が多い。しかし、企業として儲けていたとしても始まったばかりのブランドではそこまで予算を割ける訳ではないので回収プランが重要になります。そしてその回収プランが一番厄介なのです。
リアル店舗なら今までの経験則や出店場所商業施設のトラフィック、坪効率などから適正な予算と見込みとなる売上目標を算出するのは難しくありません。しかし自社のECサイトとなると、ブランドの知名度やその企業が元々持っているリーチによって大きく変動する為、非常に予測がしづらい。
自社のブランドサイトやソーシャルメディアが既にオウンドメディアとして機能しており、リーチを担保できるのなら予測も少しは可能でしょう。しかしECを始めていない企業が、webサイトで集客を重視しているケースは少なく、ECを始めたタイミングでやっとそこにも手をつける始めるところが多い。そんな状況ではECを始めてみても見込みとなる売上は「やってみないとわからない」しか言えません。
話を戻しますと、まず自ブランドが投下できる予算を大枠で決定する事です。スタートアップブランドなら、企業として出せる予算はいくらなのか?になりますし、既に顧客のついているブランドなら、年商規模からEC売上目標を算出し、回収プランを導き出す事が可能でしょう。それが決まって初めて予算の分配ができるようになります。
予算も決まっていないのにweb業者に「いくらくらいでしょうか?」と聞かれましても、「貴社の都合による」としかお答えの仕様がありません(もちろんご都合と予算感をヒアリングした上でご提案は可能です)。
何にお金がかかるのか?
では実際には何に費用がかかっているのかをざっくりと見ていきましょう。大まかな作業項目は下記になります。
- webサイト構築費用(ブランドサイト・ECサイト)_
- 採寸
- 撮影費用(サイトデザインの素材・商品)
- 原稿(商品説明含む)
- 日々の更新作業(ニュース・ブログetc)
- ソーシャルメディア運用
- 在庫管理・商品発送
- カスタマーサポート
だいたいこんな感じでしょうか。サイト構築に関してはアパレル企業が自社でやるケースはほぼ無いでしょう。その他の作業は社内のリソースを考慮した上で、どこまで外注するのか?という判断になります。
ここの外注費も企業によって大きく違います。サイトボリュームや外注の作業量によっても全然違いますので、明確な金額はありません。ただ、売上の見込みも無いのに外注して浪費してしまうくらいなら、社内のリソースを有効活用しながらスタートするのが得策かと思います。
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上記記事はブランドのリソースの一つである「販売員」を有効活用した事例です。店舗販売員がブログ更新する事例はよく見かけますが、ビームスでは販売員をweb上のコンテンツの一つとして捉え、ショップとしてではなく「個人」としてブログやコーディネートを提案しており、そのコンテンツ経由で商品が購入できるような導線を引いてます。
ECで集客するにはどうしても日々の更新が必要になり、更新する為のネタ(コンテンツ)がいるのですが、そこで販売員を有効活用するというエコシステムのようなものが形成されています。
こちらは一つの例ですが、web担当者を付けれるほど売上が上がっていないブランドでは営業マンや事務員がwebを担当しているというのはよくある話です。自分たちが使えるお金がいくらあって、それに対して上記で発生する作業の優先順位を決め、外注するものと内製化するものを判断する。そして売上が上がってくればweb担当者を増やすか、もしくは外注依頼する作業を増やすかという流れになるでしょう。
ECは理論上は多店舗展開しなくても全国にリーチする事が可能ですから、リーチさえ伸ばす事が出来たら回収の見込みは格段に早くなります。自社の持っているリストやリーチがどれくらいなのか?それが無いと売上目標など絵に描いた餅となるでしょう。楽天やZOZOTOWNにしか出店していないブランドさんは自分たちが直接リーチできる顧客がweb上に全くいない事に早めに危機感を感じられた方がいいかと思います。
ふかじ・まさや スタイルピックス代表。ラグジュアリーブランドのリテール管理と全国セレクトショップへのホールセール担当を経て、起業。高級衣料品、ミセス、ヤングカジュアル、などの経験を基に、ファッションに特化したECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を展開。スタートアップブランドの支援を中心に活動。その傍ら、服飾専門学校の講師も務める。深地さんのツイッターとフェイスブック