《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「チョノ」 生地への情熱から始まる服作り

2024/11/29 11:00 更新


チョノ25年春夏コレクション「Fusion and harmony」

 レディスウェア「チョノ」は商品の90%以上にオリジナルファブリックを使っています。デザイナーの中園わたるさんが熱意を持って産地や職人とのコミュニケーションを大切にしてきたことが、独自性のある物作りにつながり、ファンを引きつけています。

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産地の存在伝える

 中園さんは14年にブランドを設立し、デザインから生産管理まで、ほぼ全ての工程に携わっています。シルクスクリーンに魅了され、京都の職人の技術に圧倒されてオリジナル柄の生地を作り始めました。その後、ジャカード、ツイードと幅を広げ、産地ごとの特性を生かした生地作りに取り組んでいます。一度開発した生地は継続的に使用し、シーズンのアイテムに合わせてベースの生地を変え、品質も改善しています。

チョノでは生地の一つ一つに名前をつける。「Stella dot」もファンが多い生地の一つ
「Stella dot」のプリント製作の様子

 一方で中園さんは、全盛期と比較して日本の機屋の数が著しく減少していると聞き、将来に危機感を感じ、自分たちでできることを考えて行動してきました。機屋や縫製工場でチョノの商品の製造過程を撮影した動画をSNSで発信します。プリントは京都、刺繍は北陸と日本の産地の魅力を国内外問わず伝えたい思いで続けています。

「Fly me to the moon」はファーストシーズンから使用するブランドアイコン的な生地

 楽天ファッションウィーク東京にも数回参加し、映像で発表しました。新作を多くの人に見てもらう目的とともに、産地の活性化に貢献したい、これまで関わってくれた人たちに喜んでもらいたいと考え、エンドロールには製造に関わった会社名を掲載しました。

 また、独自の品質表示タグには製造に関わった産地や人を記載しています。消費者に限らず、他社や他のデザイナーが自分たちの商品をきっかけに産地や生産者を知って、生地を作りたいと連絡を取ることがあっても構わないとの思いです。産業や技術が残らなければ、最終的に自分たちの首を絞めることになると考えているからです。

パイプ役を担う

 中園さんはセールスマネジャーを務める妻の杏子さんに、商品の製造工程や特徴と魅力を写真とともに伝えます。同様に販売スタッフにも共有し、一つひとつ丁寧に商品説明できるようにしています。受注会や催事で顧客から「これはすごく着心地が良い」などの感想を聞いた際は、産地や工場の方にそのまま喜んでいることを伝えます。

先行受注展示会などではお客様と洋服のことをはじめ色々なお話しをします

 ブランドは「出会ったことのない作り手と商品を手にする人をつなげるパイプ役である」と中園さん。「作り手も自分たちの製品を心待ちにする人がいると思うと、辞めずに技術を残そうと考えてくれる。そうすると産地が残っていくかな」と期待を込めています。作り手と着用者それぞれの思いを受け止めた物作りとともに、お客様に喜んでいただくアイデアを出し続け、活動を続けていくことが目標です。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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