日本ファッション教育振興協会「服の日」記念講演会 ファッションを未来につなげるために

2024/02/27 06:27 更新


パネリストは、右から経済産業省の俣野ファッション政策室長、編集者の軍地氏、東京ファッションデザイナー協議会の久保議長

 日本ファッション教育振興協会は、「服の日」と定める2月9日に都内で記念行事を開き、パネリストを招いて講演会を実施した。パネリストは、経済産業省の俣野敏道ファッション政策室長、デザイナーの小篠ゆまヒロココシノ代表取締役副社長、編集者でクリエイティブディレクターの軍地彩弓氏、東京ファッションデザイナー協議会の久保雅裕議長の4人。「ファッション業界に求められる人材像」をテーマに様々な視点から、未来につなげていくために伝えたいことを話し合った。

 初めに俣野氏が、経産省が21年に実施した有識者会議「ファッション未来研究会」の議論の内容を報告。「他分野より早く循環システム構築などの課題に直面している。需給ギャップの縮小など人と自然との調和、デジタル化など技術による変化が進んでいる」と、今後の道筋として未来に向けた10の兆候を示した。

 ファッション業界の課題について、小篠氏は「市場がラグジュアリーとカジュアルに二極化し、中間層向けプレタポルテ市場が縮小している。明確なコンセプトとストーリー性がないと、若い世代には響かない」と指摘。久保氏は「川中と川上が分断し、染色・加工など川上の人材不足で生産全体に遅れが出ている点が問題。海外に出る人や企業を増やすには、輸出の基盤整備、通関の簡素化も課題」と話した。

海外からオンラインで参加した小篠ゆまヒロココシノ代表取締役副社長

 続いて軍地氏と俣野氏が、日本の産地が世界から注目され、国内外の有力企業やデザイナーと組み、物作りを行う事例が増えていることを報告。職人技の継承と発展を目指すLVMHメティエダールが、デニムのクロキ、西陣織の細尾とパートナーシップ提携を結んだ例や、日本の伝統技術や素材を使った若手ブランドの世界的な評価が上がっている具体例を紹介した。

 次に、サプライチェーンの再構築という課題について、久保氏は「縫製やニット工場で働く人の賃金が最低水準で、担い手がいない現状を変えるため、下請法など制度の改善が必要。高付加価値な物を作るには、人づくりも重要。学校では、3Dパターンなど現場で必要な技術の変化に対応し、生産管理など地味でも大切な仕事があることも学生に教えてほしい」と発言。

 デザイナーの高橋悠介が20年に設立した「CFCL」が、Bコープ認証を日本のアパレルで初めて取得し、海外でも売れている例を挙げ、「CFCLはデジタル面と金融面では支援者と組み、成功している。ナカアキラや『エズミ』も同じ様にチームを作り、PRや営業は専門家に任せているが、チーム作りが大切」と話した。

 小篠氏は「ファッションの現場で抱えている問題を学校に持ち込み、一体となって課題に向き合うことが、若い人を育てるためにも必要。大手アパレルを志望しない学生も増えており、産学で協力して考えるべき課題が多い」と述べた。

 軍地氏は「海外で日本の若手が活躍するには、ファッションに関する法律の基礎知識が必要」と話し、昨年発刊したガイドブックを紹介。俣野氏が発刊の経緯や内容を紹介し、ファッションの未来を切り開くために活用してほしいと語った。



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