《デニムいろいろ物語-1》その由来、500年前のイタリアにさかのぼる

2017/02/25 06:00 更新


私たちの生活になじみ深いデニム(denim)。定義としては、厚手の丈夫な綿織物で、一般には経糸に20番手(短繊維の太さの単位)より太いインディゴ染めの糸、緯糸に白の晒(さら)し糸(漂白した着色前の糸)を使う綾織(あやおり、織り方の一種でツイルとも呼ぶ)を指します。織物は、表に経糸の風合いが強く現れ、裏側に緯糸の色が出るので白っぽくなります。

最近は、デニムという織物が有名になり、これを使った衣類をデニムアイテムなどと呼ぶことも多くなりました。中でも、そのパンツ(ズボン)は通常、ジーンズ(jeans)と言いますね。本来は、天然の藍(indigo=インディゴ)で染められたデニムを使い、リベット(鋲)を打った作業着やパンツの総称です。

■イタリアの都市、ジェノバに由来

ジーンズは、もともと、ジーン(jean)という織物に由来します。つまり、ジーンで作られた服のことです。このジーンは、イタリアの港湾都市、ジェノバ(Genova、英語ではGenoa)から来ています。

shutterstock_312209978-640x427
イタリアの北西部に位置する、ジェノバ

ジェノバは、紀元前2世紀ごろにローマの軍事拠点が置かれてから発展し、中世には地中海貿易から欧州内陸諸国との交易で栄え、探検家のコロンブスの出身地としても有名ですね。彼の父も織物職人だったとされますが、この都市の丈夫な綾織りの綿織物が、開拓時代の米国に渡って重宝されます。最初、ジェノイーズ(genoese=ジェノバ物)などと呼ばれた後、ジーンと省略されて1567年には文献にも現れました。

これが、米国でも国産化されていくうちに、ズボンやシャツ、テント、幌など縫製品を複数形で指す「ジーンズ」とも呼ばれていきました。そのまま細綾の織物としても通用し、後に日本に伝わり、「仁斯」の漢字をあてて「じんす」と読ませました。

■デニムも仁斯(じんす)もジーンから

このジーンに少し遅れて米国に渡ったのがデニムです。デニムは本来、フランス南部の都市、ニーム(Nîmes)産の丈夫な綾織りです。当初は、セルジ・ド・ニーム(serge de Nîmes=ニームの絹織物)と呼ばれていましたが、当時から実際は毛か綿織物でした。これが英語化して前半が省略され、文献にも1695年にはデニムとして登場します。

40_denim-528x640

セルジ・ド・ニーム自体が、ジェノバ産綾織りを模倣したとも言われ、この二つはよく似ています。ただ、ジーンは後染めで藍色1色のみですから、経糸と緯糸で異なる糸を使い分けるデニムとは、違っていますね。

■藍で染めたのはヘビ除けが最初?!

では現在、デニムを使う服のことを正式にジーンズと言うのに、デニムズと呼ばれないのは、なぜでしょう? ジーンの方が先に定着していたため、織物はデニムに置き換わっても、言葉は上書きされなかったようです。結果的に、名が実体を表さず、少しややこしくなりましたね。

shutterstock_323794346-640x480
藍には害虫やヘビよけの効果があるとか

ジーン、デニムとも天然の藍染めなのは、害虫やヘビがこの染料を嫌うとされたためですが、その効果には諸説あります。

(イラスト=川口真由)



この記事に関連する記事