第一メリヤス営業企画 山下愛音さん ニットに魅せられ、企画から販売まで

2025/07/16 13:00 更新NEW!


製造現場をこなしながら自社ブランドの企画から店頭販売までこなす山下愛音さん

 ニットメーカーの第一メリヤスで営業企画を担当する山下愛音さん。上田安子服飾専門学校で布帛中心に学び、横編みに関する知識はほとんど無かったが、「新しいことを覚えるたびに興味が湧き、ニットの魅力に引きつけられた」。主力事業であるOEM(相手先ブランドによる生産)業務に携わりながら、自社ブランドの「ゲージ」などを任されている。

(山田太志)

苦労を共感に転換

 第一メリヤスの創業は1919年、一世紀を超える歴史を持つ。大阪郊外の枚方市に本社および工場を構え、島精機製作所の無縫製編み機「ホールガーメント」15台を含む横編み設備一式を持つ。輸入品が圧倒的になったニットの業界で、15.5ミクロンのスーパーファインウール、カシミヤ、シルク、オーガニックコットンなどの天然繊維使いを中心に、国産の上質なニット製品を作り続けているメーカーだ。OEMが主力事業だが、近年力を入れているのが「ゲージ」をはじめとする自社ブランド。「ニット業界の〝物差し〟になりたいという思いを込めた」と小久保貴光社長。

上質な天然繊維を中心とする国産ニットブランド「ゲージ」

 自社ブランドの育成を任されているのが山下さん。デザイン、プログラミング、編み機操作からメンテナンス、製品が完成すればSNSでの情報発信や期間限定販売での接客までをこなすマルチプレーヤーになっている。ドライバーなどのメンテナンス機器を入れたポーチを腰に日々製造現場を支えながら、自社ブランドの仕事が加わる。「もう少し企画や販売に時間を取れればいいのですが…」とほほ笑む。

 期間限定販売の機会も増え、直近では阪神梅田本店、阪急うめだ本店、近鉄百貨店草津店などでの販売が具体化した。上質な素材を使いながら、セーターで1万5000円弱とリーズナブルな価格。期間中に数十着ペースの実績も付くなど、「回を重ねるごとにリピーターが増えてきた」と喜ぶ。店頭販売時に、目の前の商品だけでなく、企画から物作りの苦労などをお客に共感してもらうことで、ファンを増やしていきたい考えだ。小久保社長は、自身が長く親しんできた音楽に例えて、「演奏を聞くだけでなく、演奏を聞きながら一緒に踊ってもらえれば、楽しさが増すはず」と言う。

小久保貴光社長

夏物の底上げにも

 歴史を大切にしながら、新しい挑戦も進む。ニットが比較的弱い夏物対応も狙いに、新たな自社ブランド「夏彩の葦」も立ち上げた。同じ枚方で葦(ヨシ)繊維の普及を目指すアトリエMayと協業し、ウールやオーガニックコットンと、ヨシの複合素材を使ったニットを打ち出している。ヨシの持つ環境や生態系保護、UV(紫外線)カットや防臭・抗菌機能などが特徴だが、「扱いの難しい素材であり、一口で言えないほど繊細なメンテナンスが求められる」。「世界初」のヨシ糸ニットとして強化中だ。

ヨシ繊維使いの「夏彩の葦」

 「現状、自社ブランドは年齢層の比較的高い人が中心。これからは若い層に向けた企画も増やしていきたい。新しい人も下に入ってきた。時間と機会を見ながら、期間限定販売も増やしていきたい」と意気込む。



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