《明日につながる人作り》来たれ!未来の職人 注染産地・堺市で養成道場 官民で最長9カ月
堺市は、ゆかたや手拭いの生地を染める注染(ちゅうせん)の産地。近年は安価な輸入品の増加、人手不足などを背景に規模の縮小が続く。人材を確保し、江戸時代から続く伝統技法を守ろうと、市や外郭団体の堺市産業振興センター、堺注染和晒興業会が一緒になって、今年から職人養成道場を開講した。
(山田太志)
講座後に面談
「来たれ!未来の注染職人 堺注染職人養成道場」と題し、最長9カ月の講座を組む。基礎研修として1回2時間の座学4回、1回4時間の技術学習7回を、9~12月の間に実施する。その後、参加者と企業が面談し、双方の意思がマッチすれば来年1月から3月まで「職人見習い」として製造現場で実技研修に入る。最終的に4月から正式入社というのが理想の流れだ。市は一連の広報活動や事務的な調整のほか、1~3月の人件費の一部を負担する。
今年の受講者は男性1人、女性13人の計14人。今は別の仕事に携わっている人やアルバイト、待業中の人に加え、芸術系大学の3年生なども参加している。第1回の技術研修では4班に分かれ、初めて製造現場を訪問した。工場は、西川由染晒工場、協和染晒工場、北山染工場、ナカニの4社。
北山染工場では、「板場」と呼ばれる糊(のり)付け、染料が広がらないように糊で模様部分を囲む「土手引き」工程などを体験。参加者からは「白生地一つで数多くの種類の違いがあるのに驚いた」「糊付け作業がこんなに力が要るものとは思わなかった」など、様々な声が上がった。
深刻な人材不足
注染の職人養成道場は今回が初めての試みだが、市は堺の伝統産業である刃物で同様の取り組みを進めてきた。刃物では応募36人、うち14人が合格後、マッチングを経て結果的に7人が仕事に就いている。
大阪府伝統工芸士の資格を持つ北山染工場の北山雅啓代表取締役は「産地の人材、特に若い人材の不足は深刻。行政から応援を得て、こうした取り組みを進めることができたのはありがたい。製造現場の面白さと同時に、つらさ、しんどさを我慢できるかどうかがポイント。ぜひゴールまで続けて欲しい」とエールを贈る。
(繊研新聞本紙9月28日付)