新型コロナウイルスの影響は、国内テキスタイル生産に大きな打撃を与えている。繊研新聞は5月から6月にかけて桐生や山梨、遠州、滋賀、京都、播州、三備といった地域の産地企業にアンケート調査を実施し、29社から回答を得た。見えてきたのはサプライチェーンの崩壊につながりかねないほどの生産の大きな落ち込み。回答からは産地企業を取り巻く厳しい環境が浮き彫りとなった。
【関連記事】《コロナ禍の国内テキスタイル産地㊦》企業存続へ対応を模索
受注減、キャンセルも
事業活動への影響について、「ない」および「あまりない」と答えた企業は29社のうち1社にとどまり、ほぼすべての企業が「ある」と回答した。影響としては「受注の減少」を挙げた企業が24社と最も多く、次いで「商談の遅れ」があり、「減産要請」や「キャンセル」が続く形となった。
「客先から納品ストップがあった」「未払いのものがある」「900反のキャンセルがあった」「来シーズン用の見本や本番の予定がなくなった」――といった声も聞かれた。
展示会の中止や営業活動・出張の自粛といった商談の遅れを挙げる企業も多く、「新企画の減少」「来夏向けの商談は20~30%のダウンを覚悟する」など先行きへの不安も色濃くなっている。7月以降の受注状況については「見通しが困難」とした1社を除く全ての企業が前年同期を下回ると回答した。
大半が2割以上減
1~4月および1~5月の生産状況については28社が前年同期を下回ったと回答しており、その減少幅についてもほぼ全ての企業が2割以上の減少と厳しい状況。5月もしくは6月単月では前年同月比で4割以上の減少となっている企業が11社にものぼり、中には7割以上落ち込んでいるところも数社あった。急激かつ大幅な生産の減少に加え先行きも不透明なことから、「この状況が続くと会社を閉めるしかない」といった声も聞かれる。
不調だった分野・用途としては衣料品全般と答える企業が多く、そのほかにもファッション衣料やインナー、ワーキングと幅広い分野の回答があった。
一方、厳しい中でも好調だったとの声が多かったのは二重ガーゼなどのマスク用素材。冷感加工やちぢみ素材など夏向けマスクへの需要もあり、「抗菌、制菌加工素材への発注が増えた」とも。そのほか、「切り売り生地屋向けのコットン素材」など巣ごもり需要に対応する素材へのニーズが見られ、「メーカーのネット販売向けの商品生地」「3、4月のカタログ通販は予想以上に売れた」とEC関連も好調だったようだ。
(繊研新聞本紙20年7月7日付)