【めてみみ】誂(あつら)えるという文化

2017/07/21 12:01 更新


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 東京・表参道で、注文靴の職人でデザイナーの深谷秀隆さんの作品展が開かれている。日本人として初めてイタリア・フィレンツェにビスポークの店を構えた深谷さんの開業10周年を記念し、15年にフィレンツェのマリーノ・マリーニ美術館で開催した作品展が巡回している▼深谷さんとは店を構える前からの付き合い。その細くエレガントな靴は今や欧州でも高級な注文靴として認知されている。同郷でもあり長年の付き合いということで、高額ではあるが一足誂(あつら)えることにした。もちろん、注文靴なので採寸や木型作り、仮縫いなどを経て時間をかけて作ることになる▼採寸をしてもらうと、足のことをより知ることができる。夏より冬の方が乾燥して小さくなること。自分の足は右より左の方が大きく、アーチが低いこと。そんな話を聞きながら、モデルを選び、色と革を選んで仕上がりに思いをはせる▼フィレンツェには伝統的な手仕事の技が残り、誂える文化がまだ存在する。深谷さんだけでなく、ビスポークテーラーとして当地で活躍する宮平康太郎さんもそんな職人の一人。効率化や大量生産とは対極にある物作りを日本から渡った職人たちが担っている。AI(人工知能)をはじめとする新しいテクノロジーが注目される一方で、手仕事による誂え文化の持つ意味も大きい。

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