「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」(はじめの100か月の育ちビジョン)をご存じでしょうか。前回も少し触れさせていただきましたが、これは、23年12月、こども家庭庁から、「こどもまんなかの社会」を実現するため社会の考え方を変えていく際の「羅針盤」として発表されました。
(フレーベル館『保育ナビ』 坂井克司)
はじめの重要な時期
ここでの「100か月」とは、「お母さんがこどもを妊娠してから、小学校1年生の途中くらいまで」の時期を指します。この時期こそ「長い人生において、人格の基盤を築く、はじめの重要な時期」であるというメッセージが込められているそうです。
その中では、①こどもの権利と尊厳を守る②「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイング(幸せな状態)を高める③「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える④保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする⑤こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す――というビジョンが掲げられています。子どもと子どもを取り巻く環境(人的・物的)すべてに目配りされた内容であることがわかります。こども政策の全体像を示す「こどもまんなか実行計画2024」にも反映され、今後、具体的な施策として実施されていきます(「こども誰でも通園制度」などが含まれます)。
大人が心の安全基地
私がかかわる『保育ナビ』は、園のマネジメント層が主な読者層となることから、②にある安心と挑戦の循環に注目しながら企画を進めています。国の資料には「安心」=アタッチメント(愛着)、「挑戦」=豊かな遊びと体験という説明があり、このアタッチメントが安心の土台を築くものになります。安心があれば、子どもは気兼ねなく挑戦できる。挑戦するうちに不安を感じれば、また安心を求めて大人の元へ戻ってくる。
大人が子どもの心の安全基地になることで、子どもはどんどん新しいことに挑戦できるといったイメージで、この循環が子供のウェルビーイングを高めていきます。子どもの育ちを大人がしっかりと支えていくこどもまんなかの社会を考える時にも、この「安心と挑戦の循環」の視点が欠かせないような気がします。
急激に少子化が進んでいますが、この五つのビジョンが社会に浸透する頃には、社会のありようはこれまでとは違ったものになっていそうです。