日本の伝統的な農作物であり、生育が速く地球環境に優しく、機能性にも優れる大麻(ヘンプ)の製品や文化を広げたい――大麻に特化した事業を展開する麻福(三重県伊勢市、北村隆匡社長)は、伊勢市に昨年11月に外宮参道店を出したのに続き、今年5月に本店を開いた。今後は店舗以外にも発信の場を広げ、世界の大麻製品を置くショールームや、糸や生地などを揃えて外部の人が作業できる〝物作りの場〟を提供する。
(近藤康弘)
マイナスイメージ払拭
大麻はかつて、日本人の生活には欠かせない素材だった。しかし、産地の縮小や他の素材に押され、使われる機会が減少。神社の祭事では今も欠かせない繊維だが、一般には薬物としての認知度の方が高く、マイナスのイメージが伴う。
麻福は長年にわたり、大麻に特化した雑貨や服を作ってきた。本店では手袋やマスクといった人気商品のほか、レディスとベビーの服・雑貨、寝装品などを揃える。本店2階では10月から「大麻博物館イン伊勢・麻福」を開催。違法な薬物のイメージを払拭(ふっしょく)するため、農作物として根付き、生活に使われてきた大麻の良さをアピールしている。
同社はアシストV(神奈川県藤沢市)の事業部門として、中国から大麻糸を輸入し、日本で生地や製品にしてきたが、昨年8月に独立、12月に三重県で会社登記した。中国では大麻糸の生産が盛んで、麻福は湖北省武漢や山西省、黒龍江省などのメーカーから輸入し、製品化している。
大麻は農薬や化学肥料が不要で、少ない水量でも育ち、輪作もできる。生育の過程で大量の二酸化炭素を吸収するため環境に優しいとされる。また、消臭や抗菌、吸汗速乾、調湿、UV(紫外線)カットなどの機能性を持つ。
EC販売やOEM対応も
同社ではそうした特性を生かし、睡眠時に着用する手袋やマスクのほか、足首や手首のウォーマー、ソックス、腹巻き、Tシャツ、キャミソール、タオル、ふんどし、ベビー肌着、スタイ、蚊帳、シーツ、枕カバー、ブランケットといった幅広い商品を開発している。
自社店舗でオリジナルブランドとして販売するほか、自社サイトをはじめとしたECや卸販売も行い、OEM(相手先ブランドによる生産)にも対応する。
今後は本店2階や隣接地の空きスペースを活用し、「暮らしの中での大麻製品の良さを知ってもらい、普及を目指す」(北村社長)。漆喰(しっくい)に大麻繊維を混ぜた壁や、その中材に大麻わたを使った小部屋を設置し、大麻の新たな提案にも力を入れる。
11月中に世界の製品を集めたショールームや様々な素材を使って作業できる場を設け、関心を持つ人が集まることができる「伊勢麻福ラボラトリー」の構築を目指している。