21年春夏ミラノ・コレクション ルネサンスやフレスコ画を着想源に

2020/09/29 11:00 更新


 21年春夏ミラノ・コレクションはデジタルとリアルが平行する形で開催されている。リアルの展示会で目立つのは、イタリアの伝統からイメージを広げたコレクション。再生の象徴としてルネサンスを題材にしたコレクションや、フレスコ画の色や柄からイメージを広げたデザインが目立つ。

(デジタル=小笠原拓郎、リアル=高橋恵ミラノ通信員)

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シンプルな中にインダストリアルなムード加えて プラダ

 プラダは21年春夏コレクションをデジタル配信で披露した。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズを共同クリエイティブディレクターに据えての初のコレクションとなる。柔らかなクリームイエローのじゅうたんとカーテンという空間にたくさんのカメラがつるされている。温かみのある空間と武骨なカメラという会場設定が、どこかインダストリアルなムードを感じさせる。そこに、スクエアな布のようなアウターを体に巻き付けたモデルたちが次々と現れる。着るというよりは体に巻いて、フロントでぎゅっと手で握りしめる格好。それはかつてラフ・シモンズが手掛けた「ジル・サンダー」の最後のコレクションで見た記憶がある。しかし、当時のコートがダブルフェイスカシミヤの美しい色だったのに対して、今回はデジタルの制約もあり質感もフォルムもあいまいなままだ。

プラダ

プラダ

 そんなアウターと組み合わせるのはたくさんのセットアップ。ストレートラインのチュニックのようなトップとパンツの組み合わせが多く、胸元の大きな三角のロゴが強調される。サテンのドレスには共地の刺繍とともにタイポグラフィーのプリントがのせられる。グラフィックのセンスは明らかにラフ・シモンズによるもの。それがプラダらしいシンプルなラインに人工的なイメージや機能性の断片を加えている。ミウッチャらしいフレアスカートには、カットアウトのジャージーとセーターを重ねて不揃いな透け感と色のコントラストを強調する。穴あきのジャージーのスポーティーなハイネックトップとシックなスカートやコートとの対比がいかにもプラダらしい。

 2人の共同クリエイティブディレクターによる初コレクションをどう評価したらよいのであろうか。プラダの顧客から見れば、あまりにもラフ・シモンズ寄りに思えるのであろう。そこにプラダらしさはあるのだが、実際にこれまでのプラダとは違って見える。ショーのデジタル配信後にプレス向けに2人への公開インタビューが配信されたが、そこでは「共同作業はいつまで続くのか」「新しさとは」といった質問が投げかけられた。2人の視点でプラダらしさを見つめ直すというコレクションではあったのかもしれないが、現代における新しい美しさを探すことを諦めてしまったのだとすれば残念に思う。

プラダ

プラダ

 マックスマーラは、「コロナ禍からの復活、再生、再構築を目指す女性が、着るべき服」として、再生の象徴であるルネサンス時代の装束を現代風にアレンジして丁寧に仕立てた服を見せた。当時の伝令官の陣羽織「タバード」は、ポケットやドローストリングで実用性を備えたパーカに。ギャザーをたっぷりと寄せたネックラインのコンビネゾンやシャツは、16世紀の貴婦人の肖像画のように襟元を大きく開けてデコルテを強調する。カシミヤのダスターコートやトレンチの袖には、深いスリットが入り、ケープのように見える。オークル、アンバー、パステルグリーンなど15世紀に栄えたウンブリア派のフレスコ画を思わせる甘美な色合い。

マックスマーラ

マックスマーラ
マックスマーラ

 エトロは「イタリアの夏」をテーマに、伊の美と活気あるライフスタイルを礼賛した。イタリアン・リビエラの優雅な海辺の休日をイメージした。「今の時代、近しさ、親しみやすさという概念が重みを持ってくる」というヴェロニカ・エトロの自然体でリラックスムードあふれる上質なバカンス服だ。ヨット、ロープ、いかりなど、船にちなんだモチーフのシルクシャツやスカートには、マリーンのショートパンツやクロップト丈のニットベストを合わせて若々しいイメージに仕上げた。ニットの胸には、ブランドの新しいハイブリッドキャラクター「ペガサス・トリトン」の刺繍。イタリアの宮殿のフレスコ画の柄やアーカイブのスカーフ柄も登場した。

エトロ

(写真はブランド提供)



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