【ミラノ=高橋恵通信員】21年春夏ミラノ・コレクションは、公式スケジュールのショー63のうちリアルショーが22、デジタルが41で行われている。リアルでは、招待客を通常の3分の1以下に抑えソーシャルディスタンスを確保した上で、マスクの着用を義務づける。厳戒態勢ながら、コロナと共存しながら「普通」を取り戻していこうという気概と喜びが見て取れる。
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メンズとレディスを発表したヌメロ・ヴェントゥーノの会場は、普段ショーで使用している半開放的な自社スぺースだ。1100人収容の空間に、140席のみでの開催となった。「新時代にふさわしい新たなファッションの発想」として、「男性と女性の未来のファッションにおける共通言語を見いだそう」というコレクション。メンズライクなダブルのジャケットやシャツに合わせたのは、長いフェザーが風をはらむシフォンのスカート。一方、メンズのニットの背中には透けるシフォンの一面にフェザーがあしらわれている。タータンチェックに黒いシフォンを重ねた素材は、ユニセックスでドレスやシャツに。
ドルチェ&ガッバーナも1000人収容の会場に350人の招待客を集めた。テーマは「シチリアのパッチワーク」。会場全体がシチリアのカラフルなモチーフで埋め尽くされ、ショーの冒頭には、シチリアの名所とデザイン画や生地、パッチワークする職人の手仕事の様子をコラージュした映像が流れた。
長い歴史の中で、アラブ、ノルマン、スペイン、フランスなどの支配を受け、多様な文化の影響が残るシチリア。パッチワークは、それらの文化が結びつくことを象徴する。50種類の生地を職人一人ひとりのセンスで組み合わせたもの。職人技への敬意がみえる。
豪華なジャカードやブロケード、花やアニマル、水玉柄のシフォンをパッチワークした陽気なムードが流れる服が揃う。定番の黒い服は一つもない。タキシードジャケットやボントンなドレスなど仕立てが際立つ街着から、バルーンシルエットのショートパンツ、マイクロミニのティアードドレスなど、リゾートのパーティー着までが揃った。
ブルマリンは、今季からクリエイティブディレクターに就任したイタリア人デザイナー、ニコラ・ブロニャーノのデビューコレクション。1990年生まれのミレニアル世代で、ブランドの「ロマンティックで大人かわいい」DNAを、現代的にアップデートすることに成功した。かつてのアイコンアイテムだったファーの襟付きカーディガンは極端なショート丈になり、オフショルダーやワンショルダーのニットやドレスに変貌(へんぼう)を遂げた。裾のスリットにフェザーが揺れるタイトなベルボトムのパンツルックは、ほど良くセクシーでポップ。
(写真=大原広和、ドルチェ&ガッバーナはブランド提供)
月明かりとともに描く安らかな気分
フェンディ
フェンディは、ウィメンズとメンズのリアルショーの模様をデジタル配信した。柔らかな白いカーテンに映る月光を浴びた窓枠の影、緩やかにカーブしたランウェー。ミステリアスなムードも漂う中、静かにモデルたちが登場する。透け感のあるシャツやシャツドレスには窓枠や花瓶の影が淡く描かれる。デコルテを見せるレザーコートも柔らかな光を描いたようなグラデーション。白いジャンパースカートやショート丈のコンビネゾン、花の刺繍やフラワーレースのセットアップやスカートからイノセントなムードが漂う。窓枠のようなトリミングディテールのドレスやベルスリーブのコートやドレスは、どこかヒストリカルな雰囲気ももっている。白さを強調したボリュームあるダウンシャツやダウンコートが、月明かりを浴びて眠る安らぎを感じさせた。
一方、メンズはほとんどがトーン・オン・トーンのコーディネート。カットワークスエードのオーバーシャツに透明感のある白いハーフパンツ、白いスーツには白いタイや白いキャップを合わせてリラックスした雰囲気に仕上げた。
(小笠原拓郎、写真=大原広和)