【ロンドン=小笠原拓郎】20年春夏ロンドン・メンズコレクションは、ここ数シーズンに比べてさらに若手デザイナーへのシフトが強まっている。中堅ブランドが発表の場をパリに移したり、ショーをとりやめたりすることで、スケジュールの枠がこれまでショーをしていない若手へと割り振られた。
もともと新人たちの孵化(ふか)装置としての機能を担ってきたロンドンだけに、新しい才能の登場に期待は集まる。しかし、さすがに実力的に難しい若手デザイナーも多く、今シーズンは正念場なのかもしれない。
(写真=ジョン・ローレンス・サリバン、チャールズ・ジェフリー・ラバーボーイはブランド提供)
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その圧倒的なストーリーテリングの才能で、ここ数シーズンのロンドンを引っ張ってきたチャールズ・ジェフリー・ラバーボーイは、いつになく落ち着きのあるコレクションを見せた。
図書館をショー会場に、本を朗読するモデルから始まったショーは、黒にピンクやブルーを組み合わせたカラーブロックやグラフィカルな柄へとつながっていく。バックに流れるのは、ニルヴァーナやクラッシュ、ザ・ストーン・ローゼズやTレックスといった懐かしい音の断片。精霊たちが奇声をあげて舞い踊るいつものラバーボーイに比べれば、一味違う演出。ただ、いつもより落ち着いているというだけで、静かながらきっちりと自らの世界を描いている。

カットジャカードや膨れジャカードのドレスやスーツ、にじんだハートのプリントシャツやブラウス、そしてアイコンともいえるタータンチェックはドレープで柄をゆがませてスーツに仕立てる。そんな存在感のあるアイテムに、ストッキングをかぶったおどろおどろしいヘアメイクや大柄の網タイツでエキセントリックな雰囲気をプラスする。
フィナーレに登場したチャールズジェフリー本人も、いつになく落ち着きのあるスタイル。ここ数シーズンの喧騒(けんそう)のコレクションから距離を置いて、新しいスタイルを模索しているようにも感じられた。


すっかり、ロンドン・メンズに定着したジョン・ローレンス・サリバンは柳川荒士らしい、ストリートの気分をのせたテーラーリングが充実した。
大きく肩を張り出したスクエアショルダーのコートやジャケットにブーツインしたスタイルがメイン。コートやライダーズジャケットは、バックやサイドをスナップボタンで開閉するディテール。
大きなシルエットの迫力のあるフロントに対して、ベアバックでコントラストを作る。グリッターやペイントでグラデーションを描いたデニムパンツやデニムブルマ、ファスナーを部分的に飾ったピークトラペルのコートなど、カットアウトへと変化するディテールがいっぱい。

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