《視点》蚕

2025/03/25 06:23 更新


 子供の小学校の廊下を歩いていると、むくむくと太った蚕の幼虫が空き箱の中で飼育されており、一瞬びっくりした。自分が子供の頃には無かった経験だが、どうやらその小学校では3、4年時に児童が飼育学習することが多いようだ。

 10代で東海地方から関東郊外に引っ越してきた頃、幹を短く切り詰めた木立が並ぶのが桑畑と知り、「近くに養蚕農家があるんだ」と新鮮に思った記憶がある。当時より、そんな畑もだいぶ少なくなった気がする。東京の小学生の日常からは、さらに縁遠いはずだ。

 絹は蚕から、綿は綿花から採れること。製品となるまで、様々な過程を経ることなど教科書では学ぶはずだが、そこにかかる手間や時間へ思いをはせるには、やはり体験が必要だという教育的視点が蚕の飼育学習にはあるのだろう。

 その体験が、介在する多様な業種や働く方たちについて解像度を高め、物を大切にする姿勢につながればありがたい。

 ただ、一保護者としては「あの蚕飼育セットは家に持ち帰って来るのだろうか。最後は、どうするのだろうか」という点が少々気になっている。

(維)



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